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涼風 あおい
涼風 あおい
novelistID. 18630
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どんな切れ端でも

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俺は悩んでいた。

いやまさか、だって相手は男だぜ?同性だぜ?ありえねぇだろ。
散々言われてきた「コレなのか?」っていう台詞が実は暗示だったとか――。
いやいやいや、アイツが俺にそんな暗示をかけるわけがない。
そんなことをする利点がアイツにない。
でもそうであったなら、と考えてしまう。
それはつまりやっぱり―――

付き合いの長い古参メンバーには俺の悩みなどお見通しだったようだ。
「いい加減鬱陶しいからやめてくれるかしら。好きになっちゃったならしょうがないじゃない。あなたのアホ頭でこれ以上考えても変わらないと思うわよ。だからさっさといってきやがれ」
口が悪いです、ゆりっぺさん…。
我らが戦線のリーダー様に文字通り背中を押され…いや、蹴られて作戦本部を追い出された。
スカートで蹴るなよ仮にも女の子だろ、と何度言っても聞く耳を持たず、その点はもう諦めた。
「つーか思いっきり足跡ついてんですけど…」
ブレザーを脱いで確かめてみれば案の定女の子らしい小さなサイズの足跡がひとつ付いていた。
さっさといってこいと言われても…行ってどうするってんだよ?
軽くはたいて足跡を落としたものの、陽気な天気にまた羽織ることをやめた。

ため息をつきながら屋上への扉を開けると、そこには今一番会いたくて一番会いたくない奴がいつものコーヒーを飲んでいた。
一瞬止まりかけた心臓が一気に速くなる。
――ああ、やっぱりコレなのか…。



俺は悩んでいる。

どうやら俺はアイツのことが好きらしい。
友人として、戦友として、仲間として、ではなく。コレは恋慕だ。
――で?
片想いし続けるのか?
それとも想いを…告げるのか…?
俺が?アイツに??
呼び出して「あなたのことが好きでしたぁー!」って?
…ドン引きだろ…。

幸い扉が開いたことに気づかれていなかったので、そのままこっそり扉を閉めると、気持ち足音を忍ばせてその場を去った。
本部に帰ったらまたリーダー様に足蹴にされそうなので、寮へ逃げることにした。
「どうしたの?悩み事?」
マンガを読みながら好物のポテトチップスを貪ってるルームメイトの横を通りすぎて椅子へ座ると同時に話しかけられた。
コイツも古参、しかも同室ときた。文字通り一緒にいた時間でいえば、きっとリーダー様よりも長いだろう。
「伝えるべきかわかんねーんだ…」
と告げると、一瞬きょとんとし、それからすぐにいつもの笑顔がこぼれた。
「あんまり深く考えちゃだめだよ。勢いとタイミングって大事だよね。口で伝えにくいなら手紙でもいいと思うし」
今度は俺がきょとんとする番だった。
コイツはどこまでわかってるんだ?
邪魔になるだろうから遊びに行ってくるね、と言い残して去ってしまったルームメイトを少し不気味に思う。
「手紙、ねぇ…」
机の端に並んでいるものの中からノートを引き出すと、1ページ目を開いた。
筆記用具も机の上のペン立てに沢山入っていた。
ここへ来てから一切手を触れていなかったそれらは、少し埃っぽい。


音無へ

好きだ

日向より

―――なんて、
「書けるかあぁぁぁぁぁ!!!!」
乱暴にページを破り取ると、丸めてゴミ箱目がけて投げつけた。
丸まったノートの切れ端は、軽い音を立ててゴミ箱の縁へぶつかると、縁の外側へと着地した。
「ボールと紙は別物よな、ははっ」
誰が見ているわけでもないのに、元野球部のプライドからそんな言い訳をする。
言葉にのせられて書いちまったけど、どう考えてもおかしいだろ。
俺が手紙?ありえねー…。どう考えてもガラじゃない。
思わず盛大なため息が漏れる。


俺は悩んでいる。

本当に伝えるべきなのか?
もし、伝えて、拒否されたら?
そうしたら今までのようにはいられないだろう。
そうなるくらいなら、このままの方がいいんじゃないだろうか。

考えれば考えるほどに不安が重なっていく。

そしてまた盛大なため息をつこうと息を大きく吸い込んだ瞬間、部屋のドアを叩く音と、アイツの声が聞こえた。
「日向、いるか?」
吸い込んだ息は吐き出されず、俺の中に留まった。
そのまましばらく、返事をせずに―いや、できずにいると、いないと判断したのだろう、「いないのか…」という声と、足音が遠ざかっていく音が聞こえてきた。
「っぶねぇぇぇ…死ぬかと思った…」
溜め込まれた息は、ため息ではなく音声として吐き出された。
「死なないんだろ?この世界では」
「ッ!?」
緊張が緩み、脱力した上半身を机の上に放ると同時に、ドアの方から思いもよらぬ人物の声がした。
その瞬間またも全身に緊張がはしり、硬くなった身体を動かし声の方へ向けると、アイツがいた。
「いるなら返事しろよな」
さっきの遠ざかる足音は別の人物のものだったようだ。
招きもしていないのに、遠慮のかけらもなく部屋へ上がってきた音無を目で追うしかできずにいると、その音無はまっすぐ俺のもとへ歩いてきた。
「勉強…なわけないよな。何してたんだ?」
言えるわけがない。
「い、いやぁ…たまには俺が作戦でも考えようかと思って…」
「へぇ…日向がな」
「ま、まぁな、俺も古参組だしさ。これくらいは…」
こそこそと、真っ白なノートを閉じて元の場所へ戻す。
思わぬ本人の出現に、心臓がばくばくいっている。
なんとか静めようとつとめるものの、本人が目の前に居たんじゃ落ち着くものも落ち着かない。
「なんかすっげー汗かいてるけど、大丈夫か?」
ドキッ。ズバリ痛いところを突かれた。
「や、やー…今日は暑いよなーははは。音無なんか飲むか?」
「いや、さっきコーヒー飲んだし、いい」
「そっか。俺ちょっと便所いってくるな」
なんとか冷静さを取り戻そうと、この部屋の中で、唯一1人になれる場所へ逃げることにした。

まだ、心の準備ができてない。
今はまだ、今まで通り友達として、戦友として、接していなければならない。
それならば、動揺しないようにしなきゃ――。
冷たい水で顔を洗い、火照った顔を冷やした。
どれくらい篭っていただろうか、ようやく平常心を取り戻した俺は、ユニットバスから出てると音無への言い訳を始めた。
「わりぃわりぃ、なんか腹下したみてーで、出てこれな…か…」
音無は部屋の隅に立っていた。
そう、そこはちょうどゴミ箱のある…
―まさか…
そう思ったのと、振り返った音無の手元にあるモノが目に入ったのはほぼ同時だった。



同室のアイツの声が頭をよぎる。

“勢いとタイミングって大事だよね”



――もう、どうにでもなれ!!


作品名:どんな切れ端でも 作家名:涼風 あおい