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フールフール

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『ごめん』


たった一言送られてきたメール。
はて?と綱吉は首を傾げた。
直後に思わず窓の外を確かめた。
雨や雪も降ってなければ槍も降ってないし天変地異が起きる兆しもない、うん良い天気。
改めてメールを見返して再び首を傾げる。
あの雲雀さんが謝った。
何か謝られるようなことあったっけ?エイプリルフールはとうに過ぎたし、やっぱり槍でも降るんだろうか。

「いやまてよ…」

もしや、最近まで小競り合いの絶えなかったファミリーとようやく和解の一歩を踏み出したのが白紙、いやそれ以下の最悪な状況に陥ったとか!?
うっかり壊滅させちゃいましたの事前報告!?足掛け三年のオレの苦労が水の泡!!?
…いやいやそこには数人の部下を紛れ込ませてるからそんなことが起こったらすぐ連絡がくるだろうし。
じゃあ一体何だろう。

「…あっ」

思い出した。そうだエイプリルフールだ。
二週間前に雲雀さんから突然『別れよう』って電話がきた。オレはそれをすっかり真に受けちゃって目の前がぼやけていくのを自覚しながら、それでも最後まで泣くまいと思って『分かりました』って言ったら途端に怒り出したんだ。
それで口喧嘩も終わらぬままに電話を切ってやったんだった。
でもね、普段からこういう事をしない人がやるもんじゃないよね。
その日はエイプリルフールだった。正確に言えば日付が変わってから一時間も経った4月2日。
時差を考えたんだろうけど慣れないことをしたもんだから間違えちゃってるよね。
それに気づいて、もうそこでオレの怒りは半分冷めたけど、例え嘘だろうと『別れよう』なんて言うんじゃねえよって残り半分の怒りが収まらなかったから放置してそのまま…忘れてた。
何か最後にすごい捨て台詞吐いて電話切った気がする。「お粗末様でした粗○野郎」って言った気がする。
すいませんでした貴方のモノはとても立派です何度殺されかけたか知れません。
でもあのプライド高い雲雀さんが、オレにあんな酷い事言われたのに謝ってきた。
本人も後で気づいて、多分もの凄い葛藤があったんだと思う。それでも二週間も経ったけど謝った。
こういうことされると胸キュンっていうかエイプリルフールの間違いもかわいく思えてくるっていうか。オレと離れたくないって思ってもらえてるのがすごい嬉しい。

綱吉はリダイヤルを押した。もちろん相手は雲雀さんだ。
何回目かのコール音の後、留守電サービスに繋がった。少々勢いを削がれてしまったものの、せっかくだからと残すことにした。

ピーッ。
「メールありがとうございます、オレもあの時酷い事言っちゃってごめんなさい。でも、ねえ雲雀さん。殊勝な貴方もたまにはいいけど、いつもみたいに上から口調で口塞いで突っ込んでる方がお似合いですよ」

何があっても、結局最後はオレは貴方を許しちゃうんだから。

「そうじゃあ遠慮なく」
「へっ?」

いつから、いつのまにいたのか相変わらずリボーン並の気配のなさで背後に立つ雲雀さんにオレは口を塞がれた。










粗末なモノで悪いけど。

あっ、やっぱり根に持ってた。
作品名:フールフール 作家名:七篠由良