【Magazine】
「うっさいなあ」
「どうしはったん志摩さん」
「これ!雑誌のここ読んで見て!」
賑やかな教室に一段弾んだ声が響く。
何やら学校には、否、まだ学生の身分である彼らには相応しくない雰囲気の雑誌を広げ、慌てて駆け寄ってきたかと思えば、それを机に叩きつけるという志摩の行動を、勝呂と子猫丸はまばたきをして見つめた。
あまりに強かに叩きつけられたせいか、端が少し破れているページには「関西弁男子」というポップが踊っている。関西弁…男子……?ふたりの疑問が見事にユニゾンしたところで、志摩は一度深呼吸をした。
「な?大事件やろ」
「何がやねん」
「せやから関西弁、いや、京都弁の時代が来てるんよ!」
志摩は握りしめた拳をぶんと空にあげる。が、ふたりの反応は薄い。まるで志摩の熱さと反比例しているかのようである。
「はは、ほんまかなあ」
「おい。くだらんことで勉強の邪魔すんなや」
「ええ!ふたりともなに落ち着いとるんや!?京都弁ってだけでプラスなんよ?モテモテ天国も夢やないんやで?これ、大事件ちゃう?今すぐ街に繰り出さなあかんやろ!?」
あまりにもあっさりとした反応に驚いた志摩は、ことの重大さをふたりに説明するために記事の朗読を試みることにした。関西弁むっちゃ色っぽい★今年の夏は――志摩の朗読は勝呂の睨みに遮られた。
「志摩、アホもたいがいにしぃや」
「アホちゃうって!これを機に俺はハーレムを、」
「志摩さん、そんな」
「……せやったな。アホちゃうわ」
「……坊?」
「坊!やっと分かりましたか?」
「ああ。お前はドアホや」
「!」
「ま、まあふたりとも落ち着いて」
志摩から雑誌を取り上げた勝呂は鬼の形相である。それなのに「そない気になったんなら雑誌貸しますよぉ?」なんていう志摩は天然なのだろうか。だとしたら尚更質が悪い。子猫丸は、ほんまにこれは志摩さんの悪い癖やわ、とずれた眼鏡を押し上げた。
作品名:【Magazine】 作家名:ヤドカリ