Eyes on me ?
Eyes on me ?
※無双6クロニクルネタバレのみ←
常識的に考えて、いやそもそも、いやそれ以前の問題として……
脳内を、堂々巡りの入口に入る前の思考が右往左往している。
一体全体、これはどういう事なのだろうか。その一切が理解できず、諸葛亮は命ぜられたまま、床の上で正座していた。
眼前には、憤怒の表情の司馬仲達。お隣には、幾つもの竹簡や書簡を次々に読み進める曹丕。そしてここは、魏の中枢。
敵国・蜀の軍師を呼び付ける事自体が尋常ではないが、何故に自分はそれに従いここに居るのか。そして明らかに此方の様子を窺っている青年2人は何者なのだろうか。いやそれ以前に、何故ここに司馬懿が居るのだろうか。
何一つ理解できず、ただ相手が動くのを待っていた。
「呉の小喬がどうのとか言っていたな」
口を開いたのは司馬懿だった。予想だにしていなかった名の登場に、私は思わず目を丸める。
「え、ああ。そのようなお話をした事がありました、ね」
私の言葉を待っていたように、曹丕殿が書簡をひとつ取り上げ、私の方へと投げてよこした。しかしそれは私が手を伸ばしても届かない場所に落ち、耳障りな音を立てただけだった。
「呉と言えば、あの小娘と契りおった軍師とも、何ぞあったそうだな」
「小む……あ、あぁ……周瑜殿ですか……目の敵にされてますね、私」
がらん。今度は竹簡が飛んできた。先ほどの書簡のほぼ真横に落下したそれは、やはり私からは手の届かない位置にある。
「南中」
「いやあれは私から攻め入ったんですけど」
がらん。
「天水」
「……それも、私から、ですよね」
がららん。
「張将軍と踊っておったと聞いたが」
「……不可抗力です……」
がらん。
「ああ。呉の呂蒙から闘技場で逃げ回っておったとか」
「……よく御存知で……」
がらん。
「それから」
「えーと、あの、司馬懿殿?」
「違う!!」
「!?」
がらん。ごっ。
「痛っ!?」
竹簡が飛んできた……私の頭めがけて。まさかそんな展開になるとは夢にも思っていなかったが為、まともに頭で受けてしまった。……流石に、痛い。
「貴様っ……この馬鹿めが、凡愚めがっ!!」
「いやあの、何を怒っておられるのか全く解らな」
ごっ。
「痛っ!?あ、あの、曹丕様、何を笑顔で投げつけてっ」
嗚呼、訳が分らない。何故私はここに居るのでしょう。一体この尋問は何なのでしょう。そして曹丕殿は何故私に書簡や竹簡を次々に投げつけてこられるのでしょう。嗚呼、嗚呼、訳が分らない。
「ストーリーモードでは接点が無いわ、貴様を戦友として呼び付けても特に何も言わぬわ、あまつさえ他の連中と戯れよってからに!!」
………………………………………………………………え?
「しかも何だ貴様は!共に乱入したとしてもやる気なく後からダラダラと駆けてきおって!しかも飛翔剣だの圏だの鉤爪だの……貴様、羽扇はどうした羽扇は!!」
………………………………………………………………え??
「挙句の果てにはこのところ戦友の依頼が無いと思えば淵将軍と各地を巡っているそうだな!!よ、嫁ならまだしも貴様、敵国の将を連れまわして、何を考えているのだ!!馬鹿めが!!!」
………………………………………………………………えぇえっ!?
まさか。
もしか。
いや。
これは。
どう見ても。
そんな。
いやしかし。
だとするならば。
とすれば。
いやでも。
…………………………………えー………………………………?
「諸葛亮!!貴様、聞いているのか!?」
嗚呼。聞いていませんでした。……等と、答えられるはずがないので。
「仲達、司州へ行きたいのですが」
「何の用だ!!」
「貴方を戦友登録しますので」
沈黙。曹丕殿はもう、書簡も竹簡も投げてこない。ただ、顔をそむけて笑っている。肩の震えが……それはそれは、尋常ではない。
「……い、今更……気付いても……遅いわ、この凡愚がっ」
司馬懿殿は司馬懿殿で、首まで真っ赤にして視線を彷徨わせておられる始末。
……はて、この人、いつの間にこんなに愛らしくなってしまわれたのでしょう。
私が方々から構われたり、方々に構ったりするのが気に食わないなんて。この乱世においては当然でしょうに。
字で呼ばれないのが気に食わないなんて。普段は字で呼ぼうものなら烈火の如くお怒りになるくせに。
お揃いの羽扇で戦場を駆けられないのが気に食わないなんて。ご自分だって両節棍だの箜篌だの弧刀だのとお試しになられていたでしょうに。
自国の将と私が一緒に居るのが気に食わないだなんて。大体、貴方だって敵国の将でしょうに。
何やら考え込んでしまった愛らしい人と、笑いの収まらぬ様子の君主と私の間に、幾つも転がる書簡、竹簡。その内の一つを手繰り寄せ、紐を解いてみる。
「…………」
嗚呼もう。この人は。否、この方々は。
確かに、誰かに見られているという感覚はあった。だがさして内政にかかる部分でなかったが為に見逃していたが、まさかこのお2人が差し向けた方だったとは。
詳細に綴られた在りし日の出来事が、きっとこの書物達にはそれぞれ記されているのでしょう。そしてそれを2人で見ては、司馬懿殿は怒り狂いその様を曹丕殿は楽しんでおられたのでしょう。
そうと解れば話は早い。一刻も早く、戦友登録しなくては。
「司馬懿殿、曹丕殿。私、急ぎますので、これで」
「ま、待て諸葛亮!」
すぐにも駆けだそうとした私を、よりにもよって司馬懿殿が呼び止める。まさか、この期に及んで『そんな事は望んでいない』等と虚勢を張るおつもりなのでしょうか。まあ、そこが彼らしいと言えばその通りなのですが。
「何か?」
「べ、別に、いちいち司州の料理屋を訪ねるまでもあるまいっ」
はて。それは一体。
「い、いまここで、お前が私に直接告げればよかろうが、馬鹿めがっ!」
これ以上言わせるなとばかりに、司馬懿殿は赤いままの顔を背ける。嗚呼、そんな事をなさっては、真っ赤なお耳が丸見えですよ、司馬懿殿。
「では司馬懿殿」
それならと向き直り、恭しく膝をついて右手は左胸に、左手は背へ回し頭を下げる。……曹丕殿の笑いを堪える音が室内に響いたが、まぁそれは致し方がない。
「私と共に、純白と紫黒の羽扇にて、戦場を自在に操りましょう」
反応があるまで、このまま跪いておく。さて、彼はどんな反応を示すだろうか。彼の姿を見る事は出来ないが、確実にまだ赤みの残った顔をしているはずだ。それにしても、曹丕殿のご満悦振りは只事ではない。……もっとも、わざわざ私をここへ呼び付ける時点で、あの方も尋常ではないのですが。
「……二度と、この私に無様な思いをさせるでないぞ、諸葛亮」
「僭越ながら、呼び名が違うようですが」
絞り出されるような言葉に、うっかり、本当にうっかりと反論してしまう。これは是非ともご尊顔を拝せねばと顔を上げると、今にも火が出そうなほど赤らんだ顔がそこにはあった。
「う、うう、う、五月蠅いわ孔明っ!!こ、この馬鹿めがあっ!!」
とうとう、曹丕殿の我慢の限界が訪れ、室内に聞きなれない高笑いが満ちていった。
※曹丕さんは諸司馬応援隊。
※…本当は、クロニクルで司馬懿と諸葛亮が対峙すると諸葛亮の対司馬懿専用セリフが発動するんですけどね…
※無双6クロニクルネタバレのみ←
常識的に考えて、いやそもそも、いやそれ以前の問題として……
脳内を、堂々巡りの入口に入る前の思考が右往左往している。
一体全体、これはどういう事なのだろうか。その一切が理解できず、諸葛亮は命ぜられたまま、床の上で正座していた。
眼前には、憤怒の表情の司馬仲達。お隣には、幾つもの竹簡や書簡を次々に読み進める曹丕。そしてここは、魏の中枢。
敵国・蜀の軍師を呼び付ける事自体が尋常ではないが、何故に自分はそれに従いここに居るのか。そして明らかに此方の様子を窺っている青年2人は何者なのだろうか。いやそれ以前に、何故ここに司馬懿が居るのだろうか。
何一つ理解できず、ただ相手が動くのを待っていた。
「呉の小喬がどうのとか言っていたな」
口を開いたのは司馬懿だった。予想だにしていなかった名の登場に、私は思わず目を丸める。
「え、ああ。そのようなお話をした事がありました、ね」
私の言葉を待っていたように、曹丕殿が書簡をひとつ取り上げ、私の方へと投げてよこした。しかしそれは私が手を伸ばしても届かない場所に落ち、耳障りな音を立てただけだった。
「呉と言えば、あの小娘と契りおった軍師とも、何ぞあったそうだな」
「小む……あ、あぁ……周瑜殿ですか……目の敵にされてますね、私」
がらん。今度は竹簡が飛んできた。先ほどの書簡のほぼ真横に落下したそれは、やはり私からは手の届かない位置にある。
「南中」
「いやあれは私から攻め入ったんですけど」
がらん。
「天水」
「……それも、私から、ですよね」
がららん。
「張将軍と踊っておったと聞いたが」
「……不可抗力です……」
がらん。
「ああ。呉の呂蒙から闘技場で逃げ回っておったとか」
「……よく御存知で……」
がらん。
「それから」
「えーと、あの、司馬懿殿?」
「違う!!」
「!?」
がらん。ごっ。
「痛っ!?」
竹簡が飛んできた……私の頭めがけて。まさかそんな展開になるとは夢にも思っていなかったが為、まともに頭で受けてしまった。……流石に、痛い。
「貴様っ……この馬鹿めが、凡愚めがっ!!」
「いやあの、何を怒っておられるのか全く解らな」
ごっ。
「痛っ!?あ、あの、曹丕様、何を笑顔で投げつけてっ」
嗚呼、訳が分らない。何故私はここに居るのでしょう。一体この尋問は何なのでしょう。そして曹丕殿は何故私に書簡や竹簡を次々に投げつけてこられるのでしょう。嗚呼、嗚呼、訳が分らない。
「ストーリーモードでは接点が無いわ、貴様を戦友として呼び付けても特に何も言わぬわ、あまつさえ他の連中と戯れよってからに!!」
………………………………………………………………え?
「しかも何だ貴様は!共に乱入したとしてもやる気なく後からダラダラと駆けてきおって!しかも飛翔剣だの圏だの鉤爪だの……貴様、羽扇はどうした羽扇は!!」
………………………………………………………………え??
「挙句の果てにはこのところ戦友の依頼が無いと思えば淵将軍と各地を巡っているそうだな!!よ、嫁ならまだしも貴様、敵国の将を連れまわして、何を考えているのだ!!馬鹿めが!!!」
………………………………………………………………えぇえっ!?
まさか。
もしか。
いや。
これは。
どう見ても。
そんな。
いやしかし。
だとするならば。
とすれば。
いやでも。
…………………………………えー………………………………?
「諸葛亮!!貴様、聞いているのか!?」
嗚呼。聞いていませんでした。……等と、答えられるはずがないので。
「仲達、司州へ行きたいのですが」
「何の用だ!!」
「貴方を戦友登録しますので」
沈黙。曹丕殿はもう、書簡も竹簡も投げてこない。ただ、顔をそむけて笑っている。肩の震えが……それはそれは、尋常ではない。
「……い、今更……気付いても……遅いわ、この凡愚がっ」
司馬懿殿は司馬懿殿で、首まで真っ赤にして視線を彷徨わせておられる始末。
……はて、この人、いつの間にこんなに愛らしくなってしまわれたのでしょう。
私が方々から構われたり、方々に構ったりするのが気に食わないなんて。この乱世においては当然でしょうに。
字で呼ばれないのが気に食わないなんて。普段は字で呼ぼうものなら烈火の如くお怒りになるくせに。
お揃いの羽扇で戦場を駆けられないのが気に食わないなんて。ご自分だって両節棍だの箜篌だの弧刀だのとお試しになられていたでしょうに。
自国の将と私が一緒に居るのが気に食わないだなんて。大体、貴方だって敵国の将でしょうに。
何やら考え込んでしまった愛らしい人と、笑いの収まらぬ様子の君主と私の間に、幾つも転がる書簡、竹簡。その内の一つを手繰り寄せ、紐を解いてみる。
「…………」
嗚呼もう。この人は。否、この方々は。
確かに、誰かに見られているという感覚はあった。だがさして内政にかかる部分でなかったが為に見逃していたが、まさかこのお2人が差し向けた方だったとは。
詳細に綴られた在りし日の出来事が、きっとこの書物達にはそれぞれ記されているのでしょう。そしてそれを2人で見ては、司馬懿殿は怒り狂いその様を曹丕殿は楽しんでおられたのでしょう。
そうと解れば話は早い。一刻も早く、戦友登録しなくては。
「司馬懿殿、曹丕殿。私、急ぎますので、これで」
「ま、待て諸葛亮!」
すぐにも駆けだそうとした私を、よりにもよって司馬懿殿が呼び止める。まさか、この期に及んで『そんな事は望んでいない』等と虚勢を張るおつもりなのでしょうか。まあ、そこが彼らしいと言えばその通りなのですが。
「何か?」
「べ、別に、いちいち司州の料理屋を訪ねるまでもあるまいっ」
はて。それは一体。
「い、いまここで、お前が私に直接告げればよかろうが、馬鹿めがっ!」
これ以上言わせるなとばかりに、司馬懿殿は赤いままの顔を背ける。嗚呼、そんな事をなさっては、真っ赤なお耳が丸見えですよ、司馬懿殿。
「では司馬懿殿」
それならと向き直り、恭しく膝をついて右手は左胸に、左手は背へ回し頭を下げる。……曹丕殿の笑いを堪える音が室内に響いたが、まぁそれは致し方がない。
「私と共に、純白と紫黒の羽扇にて、戦場を自在に操りましょう」
反応があるまで、このまま跪いておく。さて、彼はどんな反応を示すだろうか。彼の姿を見る事は出来ないが、確実にまだ赤みの残った顔をしているはずだ。それにしても、曹丕殿のご満悦振りは只事ではない。……もっとも、わざわざ私をここへ呼び付ける時点で、あの方も尋常ではないのですが。
「……二度と、この私に無様な思いをさせるでないぞ、諸葛亮」
「僭越ながら、呼び名が違うようですが」
絞り出されるような言葉に、うっかり、本当にうっかりと反論してしまう。これは是非ともご尊顔を拝せねばと顔を上げると、今にも火が出そうなほど赤らんだ顔がそこにはあった。
「う、うう、う、五月蠅いわ孔明っ!!こ、この馬鹿めがあっ!!」
とうとう、曹丕殿の我慢の限界が訪れ、室内に聞きなれない高笑いが満ちていった。
※曹丕さんは諸司馬応援隊。
※…本当は、クロニクルで司馬懿と諸葛亮が対峙すると諸葛亮の対司馬懿専用セリフが発動するんですけどね…
作品名:Eyes on me ? 作家名:蛞蝓亭 紅葉