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【兎虎♀】マイ・フェア・ヒーロー(新刊サンプル)

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数値化なんて意味がない。
いや、指標としての意味があると分かってはいる。
特に、バーナビーと虎徹に関して言えばNEXTとしての能力は同じだから、数値化して差を見てみたいという意見は分からないでもない。
特にスーツを開発した斎藤からすれば、スーツの完成度をより高めるという意味で必要なデータなのだろう。
だから、彼の指示に従い数値計測に協力したのだ。

しかし、だ。
この結果はいただけない。むしろ納得がいかない。詐欺としか思えない。

「よっしゃ!バニーより数値上だ!」

「ありえません…あなた何か細工したんじゃないですか」

「んな訳ないっての。それに腕のパワーはこっちが上だけど、脚力に関してはバニーの方が上だろうが」

「そういう問題じゃありません。僕がいいたいのは」

「あー、おまえの言いたいことは何となく分かった。でもそれはナシだ」

バーナビーが言いかけたが、虎徹は半ば強制的彼の言葉を遮ってしまう。
しかし、彼が言おうとしたことは、実験に参加した面々は皆が不思議に思ったことだったのだ。

「斎藤さーん、実験はこれで終わりですか?」

『ああ、終わりだ!あとは帰ってゆっくり寝ろ!』

「へーい。…だってさ、バニーちゃん」

終了と知るや否や、虎徹は早速スーツのフェイスカバーを取り去った。
現れたのは、実年齢より若く見える東洋系ならではの容貌。
さすがに三十の半ばということもあり幼さはないが、それでも尚、年齢からすれば若すぎるくらいの顔立ちだ。

フルパワーで能力の発動をした為なのか、額には汗をかいており、濃い黒髪に塗れた輝きを加えている。
スーツ上からみた体格でいえば男のようなのだが、その素顔はまさしく女性だった。

(どうして、男女差が出ないんだ・・!)

そう。バーナビーが言いたかったのは「性差」だった。
人によって差はあるものの、相対的に男性と女性では、体の性質上男性の方がパワー面では能力が上になることが多い。
実際、虎徹は身長こそバーナビーとさほど差がなく、肩幅も広い方なのだが―――それでもやはり女性と思わせるような細さもある。
それなのに、NEXT能力を発動した際、わずかながら腕力において虎徹の力がバーナビーを上回ったのだ。
確かに元々バーナビーと彼女とでは腕力の方が強い、脚力の方が強いといった違いがあるのだが、それでもこの結果には納得がいかなかった。

「はー、やっぱ肩こるなーこれ」

虎徹がその場でスーツの装甲部を外していくと、ようやくその女性らしい体格が見え始める。
腕力が高い数値を示しているだけあって上半身は骨格がしっかりとしており、潰していた為に胸板のようになっていたバストは装甲を外すとかなりの大きさであることが分かる。
それに対して思いのほか脚は細く、当然バーナビーの鍛えられた脚には遠く及ばない。
それは腕に関してもいえることで、改めて、バーナビーは納得がいかないとばかりに不満を漏らす。

「やっぱり、この腕で僕よりも高い数値を叩き出したなんて信じられない」

「…往生際が悪いぞ、バニー」

思わず呟くと、さすがに本格的に気分を害したのか、虎徹が剣呑な眼差しを向けてきた。
差別をしたつもりはないが、彼女はなにより体格差で比べられることを嫌う性質なので、バーナビーの言葉を聞き流せなかったのだろう。

「…そりゃあ、不満にもなりますよ」

申し訳ないと思ったが、本音を表に出せるほど彼女に対し素直になれないバーナビーは、小さくため息をつくと、謝罪とは別の言葉を口にしてしまった。

数値で勝ちたいわけではないのだが、何となくおもしろくない。
しかし自分でもよく分からない感覚をどう説明したらいいのかが分からなかったので、バーナビーはひとまず分かりやすい理由での「不満」であることを演出せざるをえないのだ。

「ま、こっちは能力のコントロールとか出しどころみたいなのが分かってるからなあ。バニーも慣れたらもっと数値上がるんじゃねーの」

「…つまり経験、ということですか」

「んー?ま、そういうことかな。コツつかんだらすぐに覚えるって」

アンダースーツの胸元をくつろげながら、虎徹は先ほどまでの不機嫌そうな顔を引っ込め、今度は先輩らしい労るような笑みを向けてきた。
きっと彼女なりにバーナビーと仲良くなろうという意志があるが故の表情なのだろうが、バーナビーの思考は彼女の方向とは違うところへ向かっていた。

「……」

「どーした、バニー」

「…何度も言ってますけど、スーツ脱ぐのロッカールームだけにしてもらえますか」

「暑いんだよ。このくらいいーだろが」

「おばさん年だって分かってます?正直、目の毒です。」

「なんだと!これでも結構自信あるんだぞ!」

「逆セクハラです。…ほら、早くロッカールームに行ってください!」

勢い込んで詰め寄ってきたことで、虎徹の胸の谷間がバーナビーの視界に否が応でも入ってくる。
先ほどから視線が集中してしまっていたこともあり、わずかに揺れていたのも確認してしまった。
今はスーツ姿なので動くのはわずかだが、あれが普段の姿だった場合、派手に動けば動くほどよく揺れる。
本人も揺れることを気にしている節があるので、滅多に見ることはないのだが―――――ヒーロースーツを着る前に犯人に飛びかかったりした時などは本当に目の保…否、毒だった。

「脱いだらすごいんだからな!見惚れてもしらねーぞ!」

「寝言は寝てから言ってください」

文句を垂れながらも素直にロッカールームに引っ込んでいく虎徹の姿を見送り軽口を返しながら、バーナビーがものすごく安堵したのは言うまでもない。

『大変だなァ相棒も!もういっそ襲っちまったらどうだァー!?』

「……襲ったら襲ったで面倒なことになると思いますよ、斎藤さん」

明らかに挙動不審になっているバーナビーの態度をめざとく見つけた斎藤が、すかさずマイク越しにからかってきたが、半ば本気で襲ってしまいそうな自分がいるだけに笑えない。
力なく言葉を返すのが精一杯だった。




To be continued...