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恋唄

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この身の奥深くに、未だ消えず残された光。
―――――月の光を浴び青白く輝く金の少女。



「アーチャー?どうしたのですか?」
何の感情も浮かべずに自分を凝視し立ち尽くす男に、少女は声をかける。
(彼女は……違う。オレが愛した彼女では、無い。もしそうだったとしても……彼女に愛されるべきは『今の衛宮士郎』であって私では無い)
「……アーチャー?」
(それに……この身は堕ちた守護者、彼女に触れる資格などありはしない、触れては……いけない。……何を腑抜けているエミヤシロウ、今は聖杯戦争のただ中、深く、深く沈めろ。必要無い、心など凍らせてしまえ。)
「アーチャー!聞いているのですか!?」
少女の手が男の手に伸ばされる。揺さぶり、その手を握りしめる。
「―――!?」
(セイバー……セイバー、アルトリア、セイバー、アルトリア、セイバー……!)
ギリギリと心臓が絞めつけられる、苦しみに似た、愛おしさ。
「アーチャー……貴方は何故……」
かけられる少女の声に戸惑いの色が滲む。
(何故?……ああ……頬を伝うこの感触は……)
「……私にもまだ……涙というモノが残って、いたのだな……」
どこかぼんやりとした声音で呟きを落とし。
「何でもない……見張りに行ってくる―――気にしないで、くれ」
そっと手を振りほどき、逃げるように姿を消してその場を去る。

「アーチャー……」
再び手を伸ばす事も、追いかける事も出来ずに沈黙を落とし。
どこか青ざめた貌の赤い少女が静かに見守っていた。
(……あのバカ……なんて気持ちで泣いてんのよ……)
あまりの強い感情故にパスを通って流れてきた感情。それにただ呆然とするしかなくて。
(アンタにどんな過去があったのか、何を隠してるのか……わからないけど……“涙など私には残っていない”なんて言った奴が、ただ静かに涙し続けてしまう程『愛しい』って……何なのよ……)
「あのバカ……セイバー、気にする事は無いわ。もう寝ましょう」
「凛……」
「いえ、寝ないといけないわ。少しでも万全の体制を整えないと」
「……そう、ですね。シロウも、そろそろ風呂を上がるでしょうから……待ってから寝るとします。凛、先に休んでください」
「セイバー……そう、ね……そうさせてもらうわ……おやすみなさい」
赤の少女は静かに部屋を出、自室へ向かった。


屋根の上に立ち、崩折れそうになる身体を支えるべく両足に力を込め。
(まさか…もう一度、あの手に触れることが出来たとは……)
深く冷えた空気を吸込み、血を滲ませながら唇を噛み締める。
(乱れるな、俺の心……深く、沈め……色を消せ……この罪だけは……犯してはならない)
煌々と耀う月を睨み、再び静かに涙を頬に伝わせていた。


―――後日
衛宮士郎が拉致され、その救出に向かい。
ただ一人、赤の騎士は、窮地から主人達を救う為に命を散らせた。
誰にも真名を告げる事無く。


あぁ……アルトリア、俺も君を愛していたよ―――――


想いは語られる事なく光に溶けた
作品名:恋唄 作家名:ふもった