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My and my truth

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「…痛みを伴わない教訓には意義がない」

 少年は暗い闇に向かって呟いた。

 虚無に吸い込まれていく自分の言の葉が、儚く千切れていくのが見えた気がした。

 そして、また何か、違うものが自分の内から消えたのを確かに感じた。


ー人は何かの犠牲無しに、何も得ることなどできもしないのだから

                     *                       
 涼しい透き通る様な明け方の空気。
 
 まだ朝日の差さない小さな丘の上の家の屋根の上で、金髪青眼の双子は静かな時を堪能していた。

「…フィン、今日だな」

 三つ編みの方の少年は、瓜二つのもう一人の少年に声をかけた。

「そうだね……でも、成功するかどうかは分からない」

 利発そうなもう一人の少年はそれっきり口を結んだまま、顔を上げなかった。

「フィンの理論は完璧だ、失敗なんてする訳ねぇ」

 隣の少年は対照的で、希望に満ちた瞳を輝かせて笑っていた。

 が、フィンと呼ばれる少年の暗さに違和感を覚え、顔色を伺った。

「…心配なのか?」

 少年は、静かに泣いていた。

「僕は…父さんが人体錬成で身体の一部を持ってかれたというけど…」

「真理に、父さんの持っていかれた身体の一部を取り戻しにいくのにも、

代価として身体を持ってかれてしまうと思う」


「…禁忌を犯した罪人の、下された罰は一生背負っていくんだ」

 
 彼等は、元国家錬金術師エドワード・エルリックと、
 
機械鎧整備士ウィンリィ・ロックベルとの間に生まれた双子の子供である。

 賢い兄は、フィンセント・エルリック。水から錬成するのが得意とし、

正義感の強い弟は、クリスファード・エルリック。光から錬成するのを得意とする。
 
 そんな2人は、世間の11歳の少年よりも優れた錬金術の知識と能力を身につけており、

周りから期待の目を向けられていた。

 双子は、自分たちの父親エドワードの左足が、“真理”という場所に置き去りにされていることを知っていた。

 そして、それは人体錬成という錬金術の禁忌を犯した者の罰ということも知っていた。

 彼等は、父親の罰の証を、取り返したかったのだ。

 
 そして、彼等は自分たちの身体を犠牲にすることを知らずに、

真理へと向かう理論を立ててしまう。


 優れた才能が、使うべき道からそれる、その瞬間。

 
 父親と同じ道を進んでしまったのだ。


ー僕は、自分の理論が合っているかを、僕の身体を使い尽くしてまでも、確かめたい

ー父さんの身体を取り戻して、罪を償いたい


 彼等は、両親が起きる前に、庭に錬成陣を描き始めた。

 

 錬金術の禁忌、『人体錬成』の陣を。
作品名:My and my truth 作家名:豆乃、