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手を伸ばして、貴方の名を。

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「虎徹さん」

「はぁい」

「虎徹さん」

「なーに」

「虎徹さん」

「……なぁバニーちゃん。俺の名前ばっか呼んでて楽しい?」

 さっきから繰り返される言葉は紛れもなく自分の名前。
 虎徹の部屋で並んでソファに座っているものの、虎徹は新聞を読んでいて、バーナビーはニュースを見ていたはずだ。触れ合った肩が空調の聞いた室内で酷く心地よかった。
 初出社の日、暫く面倒を見ると言って虎徹の部屋まで当面の宿泊道具を担いでついて来た相棒は、夕食が終わったこの寛ぎの時間をそんな風に使っていたはず。いきなり自分の名前を呼び出して、こっちが合いの手を打つと、嬉しそうに笑う。
 顔を覗き込むようにこちらを伺って名前を呼ぶ姿は24歳の青年らしくとても可愛い気があるものだったけれども、それにしたってあの仏頂面のバーナビーが虎徹に向かってにこにこと笑って楽しそうにしている姿は多分異常だ。
「だって、呼んだことなかったでしょう僕」
 だからなんだか楽しくて。そう言われてしまえばこっちはそうなの、と納得せざるを得ない。あのジェイク戦の後から、バーナビーは名前で虎徹を呼ぶ。入院中に「もうオジサンて呼ばないんだ?」と聞いてみたら今にも泣きそうな顔をされた。
 なんか手負いのケモノが全快した途端こっちを恩人のごとく慕ってくる、そんな感じ。嬉しいけどソレまでの態度が態度なのでこそばゆくって叶わない。慣れるしかないんだろうなぁと思ってはいるものの、今日のトレーニングルームは悲鳴に溢れていた事を思い出して、がっくりと肩を落とした。

 今日のトレーニングルームは復帰が一番最後になった虎徹が初出社するとの噂を聞きつけた他社のヒーロー達がこぞって集まっていた。午前中に動けるもの全員に出動がかかった事もあるが。
 退院を祝われる虎徹の隣にべっとり貼りついたバーナビーに一同困惑していた。
 べったりと引っ付かれた本人が困惑していたんだから、回りの驚きようは本当に物凄かった。ブルーローズ辺りはなんかお化けでも見たような顔で立ち尽くしていたし、ファイヤーエンブレムはやたらと喜色満面な顔で頬に手を当ててくねくねしていた、あれはいつもの事ながら、気持ち悪かった。
 ついでに言うとスカイハイは驚いてなかった、さすが天然。
 慣れるまで時間がかかるだろうなぁ、というか慣れる日が来るのかなあと惨状を思い出していると、隣からまた「虎徹さん」と聞える。
 こんなに名前を呼ばれたのはどれくらいぶりだろうかなぁと感慨にふけっているともう一度「虎徹さん」と今度は心配そうな声が聞えた。
「はいはい、なんだよ、バニー」
「具合悪いんじゃないですか?大丈夫ですか」
 さっきから新聞が進んでないですと言葉が続いて、あぁこいつ本当に変わったんだと実感する。ちゃんとこっちのことを見てる。
「ちょっと考え事してただけ。あんまり心配しすぎんなよバニーちゃん」
 ポンポンと宥めるように頭を叩けば、今度こそべったりと腰に抱きつかれる。
 顔を俯かせて、時々見せる思いつめたような表情になる。ジェイク事件の前はその顔がずっとへばりついていたような、そんな顔。
 ポンポンポンと子供を眠りに誘うように背中を叩いてやる。何が恐いの、と聞いてみると、ぼそぼそと下から声が聞こえてくる。
「虎徹さんが、ジェイクと戦って、倒れた時、初めて背筋が寒くなりました。あぁそうだ、人って死ぬんだって」
 あまりにも両親の死が大きすぎて、そのほかの人たちのことなんて考えられなくなっていた。
「あんくらいじゃ死なねえよ」
「嘘つかないで下さい。後で結構危なかったんだって病院の人に聞きました。だってそれくらい、あなた見た目もぼろぼろで……」
 あ、やばい。妙なトラウマ植えつけちゃったかも。虎徹が頬をかくと、キッと、不安そうな目が力を帯びたそれに変わる。
「あなたが死ぬなんて、信じられなくて。僕がどれだけあなたの態度に甘えていたか、気付いたんです」
 思えばそれだけ剣呑な態度をぶつけても、虎徹は全て受け止めてくれていた。自分を捨てずに、ずっと。どれだけバーナビーが突き放そうとしても、そっと隣や後ろにいてくれた。
 それなのに、自分の取っていた態度を思い出して、バーナビーは悔いていることは見た目からも明らかで。そんなに悩まないでいいのに、との想いをこめて、見上げてくる顔を両手で包み込む。

「でもこれからはバニーちゃんがああならないように助けてくれるんだろ?」

「っ!!もちろんです!!」

 昼間の大告白を思い出しながら、苦笑すると、そんな元気な答えが返ってきた。

 うん、俯いているより、そんな笑顔を向けてくれる方が断然いい。
 わしわしと柔らかい金髪をかき回して、虎徹はその額に口付けた。