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みっふー♪
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ヅラ子とベス子のSM(すこし・ミステリー)劇場

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「でも私、ある日自分で知ってしまったんです、私が本当に嫉妬してるのはグラサンおじさんにじゃない、シンちゃんになんだって、」
「ええーーー!?」
――あらあらまぁまぁ、途端にギャラリーのメイドさんたちがざわざわし始めた。
「あの勝気な娘がねぇ……、」
煙管を持つ肘を反対側の手に支えてまだむが言った。
「ツカおっさんあのツラでしれっと姉弟丼て……ゲテモノ喰いカヨ、」
猫ドロボウが褐色の肌に眉を顰めた。
「データベース上の項目はマニアックドープゾーンに分類されております」
CGメイドが事務的に述べた。
「……アイヤー、」
屋根の上で見物していたすこんぶ美少女も、すこんぶキャラメルのパッケージを開けながら菫色のくりくりおめめをぱちぱち瞬かせた。
――ドサッ!
と、少女と同じく屋根に張り付いてガン見していたらしき人間がどこかで二人ばかし滑り落ちる音がしたが、
「?」
――まぁいっか、関係ないやときゃらめるを口に放って少女は捨て置いた。
衝撃の姉の告白は続いた。
「――悔しかった、毎晩ろくに眠れなかったわ、だってあの人、私には決して見せない優しい顔で、シンちゃんの前じゃそりゃもう楽しそうに笑っていたんですものっ、」
――わぁぁっ!! 思い出すと身体の中に血が逆流する感覚が甦るのか、姉は激しく嗚咽した。
「……。」
――知らなかった、いちばん近くにいたはずの彼女の狂おしい心模様など、弟はそんな自分の姉に掛ける言葉を持たなかった。
しゃくりあげて姉は言った、
「……わかってる、わかってるわ、……マ夕゛オさん、私にとても遠慮していたもの、シンちゃんとだって本当はもっと距離をおくべきなんだって、私が何も言わなくても全部わかってる人だったの、……でも、それでも、どうしても、」
姉は言葉を切って啜り上げた、
「私の本当の気持ちにだけは最後まで気付いてくれなかったっ」
「……?」
すこんぶぽっぷきゃんでぃをしゃぶりながら少女は振り向いた。ようやっと屋根に這い上がりかけていた人影が、続けざまに二つばかし落ちたようだ。やはり少女には別段気を引くトピックではなかったが。
「――……てくれなかった、と」
もはやその一点にのみ存在意義を見出したかの如く、女装子探偵は一心不乱にめもを取り続ける。出番を持て余した着ぐるみはストレッチを始めた。あんまり暇なので天パはこれからの自分プラス約一名、都合二人分の人生設計について頼まれもしないのにあれやこれやと試案を巡らせた。
「……、」
涙を拭いて姉は言った、
「そんなときよ、あの人の奥さんだって人から手紙が届いたの。――ああ、これはもうダメかもわからんね、私は思ったわ。シンちゃんとだって勝負にならないのに、その上前の奥さんですって? ふざけんじゃないわよ、トップ2のデッドヒートに、周回遅れで私に恥をかかせるつもり?! ……なんて、ほんとバカみたいよね、周回遅れならまだマシよ、私はトラック上にさえいなかった、競技場の外で背中を向けて、湧き上がる歓声をただ聞いていただけ、それをあんなみっともない逆恨みして、マ夕゛オさんに手を掛けた……」
「使ったのはグラサンに仕込んだ薬物ですね?」
手にしたグラサンを示して先生が言った。
「――えっ」
疲れたような姉の顔色が明らかに変わった。
「姉上?」
少年が訝るように声をかけた。姉は激しく首を振った。
「――違います、それは本当に知りません、私は昨夜、飲んだくれて池の傍にぶっ倒れてたマ夕゛オさんを、箒の柄で後頭部思きしブン殴ってそのまま放置しといただけ……」
彼女は懸命に訴えた。嘘をついている声ではなかった。手元を見つめる先生の目が険しくなった。
「それじゃこれはいったい……」
「姉上……」
姉の仕打ちは無論褒められたことではない。だが少年はどこかほっとしていた。少なくとも姉は、姉が言うほど言葉通りの強い殺意を彼に抱いていたわけじゃない、いまはそう信じたかった。


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