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みっふー♪
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ヅラ子とベス子のSM(すこし・ミステリー)劇場

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「……ったく、てめぇのデムパ先生のせいにしてんじゃねーよ、」
ニヒルに表情をキメた天パが、池の中央からざばざば上がってきた。先生はぼーっとしていた。着流しの裾を捲り、勢い込んだ天パは啖呵を切った。
「てめぇの女装が趣味だろーと道楽だろーとカンケーねぇ、てめぇがやんなきゃなんねぇことはただ一つ、誇りと誠意を持って探偵業を全うすることだッ」
「……。」
顔の前の水草を払って女装子は黙った。ケチのつけようがない正論だった。――あの子たまにそういうとこあるから、先生は思った。
「――……、」
――ふっ、女装子のロンゲが不敵に揺れた。
「そんなこと、言われなくてもわかってるわよッ」
準備万端、予めうぉーたーぷるーふにしといて良かったっ、マスカラばりばりの目をカッと見開いて女装子が言った、
「いいことよくお聞きなさいな、いますぐサクッと解決してやるわっ、……あのグラサンを仕込んだのはっ、何を隠そうこのアタシよっ」
――ババーーン!!!
腰に手を当て、肩幅に開いた足にピンヒールを踏み締めて、女装子がびしぃと空を指した。
「……。」
一瞬の間のあと、いろんなところから怒号と罵声といろんなものが一斉に飛んできた。
「てめぇ! 何が探偵だただのマッチポンプじゃねぇかっ!」
「何なのアナタひどいわいったいマ夕゛オさんに何の恨みがあってっ」
「……あっ、姉上それはボクの髪の毛ですっ……!」
「給料アゲローーーーっっ!!! 有休ヨコセ!!!」
――ドフッ!
塀から屋根の上へかっこよく飛び越える練習をしていたワン公が、たまたま後ろ脚を蹴り損なって女装子の真上に落ちてきた。
「……アンタ、アタシの投げた煙管取って来てくれるかい?」
腕組みしていたまだむが言った、
「ラジャ!」
駆け出して行こうとしたCGメイドが、くるりと向きを変えたところで動きを止めた。
「すみません、ばってりーが上がってしまいました」
「……。」
まだむは黙って煙草とライター入りの袂に手を突っ込んだ。
「ちょっ、ちょっと待って、皆さんいったん落ち着いてっ」
おろおろしながらおじさんが言った。しかし誰も聞いていない。先生がカバンから取り出した拡声器をサッとおじさんに渡した。おじさんは礼を言って受け取った。拡声器片手に、思い出して袂から取り出したビニテぐるぐるのグラサンをすちゃ!装備する。マイクのスイッチを入れておじさんは声を張った。
「……アーアー、当方の要求はひとーーーぉっつっ!」
「――、」
なんだなんだ、皆の視線がおじさんに集まった。おじさんは揚々と続けた。
「現場の騒擾行為を速やかに中止しなさいっ! 提言が受け入れられない場合はっ、こちらも粛々と次のステップに移るっ!」
「……。」
よくわからないが、場はひとまず収まった。屋根の上の決闘も一時停戦した。
「マ夕゛オさん……」
髪を引っ張られたはずみに縒れた眼鏡を直しながら、少年は呟いた。
おじさんはずぶ濡れのくたびれた半纏に、その上さらに薄汚れた着ぐるみの布を羽織り、ビニテ補強のグラサンを掛けているのに、なぜかとても輝いて見えた。


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