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Bon Anniversaire!!

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「これやる。」
その言葉と共に俺の前に突き出されたのは、シンプルで上品な布包みだった。
今日は俺の誕生日なので、プレゼントを貰うのは別に変なことではないが。
この意地っ張りで素直じゃない隣人がパーティー会場などという人目のあるところで俺にプレゼントを渡すとは、珍しいこともあるものだ。
「べっ、べつに誕生日プレゼントだとかお前のためとかじゃないんだからな!」
(可愛いこと言ってくれるねぇ。本音がだだ漏れだよ、坊ちゃん。)
憎まれ口をたたいてはいるが、これが誕生日プレゼントだと言うことは分かりきっている。
思わず口元が緩むのが自分でも分かった。
「何笑ってんだ!だからお前のためなんかじゃないんだからな!昨日スコーンを作りすぎて食べきれなかったからお前にやるだけなんだからな!!」
顔が凍りついたであろうことは自分でも分かった。
(もしやの死亡フラグ?)
この隣人の料理はすさまじい。食べ物というよりは…あれは兵器だ。
恐る恐る包みを開いてみる。現れたのは…なんというか…筆舌に尽くしがたい…とりあえず食べ物っぽくないものだった。これがスコーンだというのか。
(坊ちゃんからのプレゼントは嬉しいけど…これは無理!でも、坊ちゃんが俺のために作ってくれたもの……いや、だからこそ無理っていうかね…でも食べないと坊ちゃん怒りそう…!どうする?どうするよ俺!)
「これ食べないのかい?」
ひょい、とその声と共に手の中のスコーンが消えた。
見れば隣人の元弟がスコーンを食べていた。
「相変わらずだね。このスコーンすごく硬いぞ。」
硬いとか不味いとか言いつつ、隣人の元弟はスコーンを食べきった。
なんというか、あれを食べれるのはすごいと思う。
「俺はヒーローだからね!」
隣人の元弟がお決まりの台詞を口にする。
隣人は、不味いとか言うなら食べんなよばかぁ!、とか言いつつスコーンを食べる元弟を嬉しそうに見ていた。
(あれ、俺への誕生日プレゼントだったんだよね?坊ちゃん。)
あのスコーンを食べたいとは思えないし、食べる勇気もない。隣人の元弟が食べてくれて助かったと思っているが。しかし、正直なところ面白くない。
大人気ないとは思うものの、面白くないものは面白くない。
知らず知らず手を握り締めていたらしい。手の中の物がクシャリと音を立てた。
スコーンは食べられてしまったが、手の中にはスコーンが包まれていた布とカード。
さっきはスコーンに気を取られて気付いていなかったがこれは…。
細かく丁寧な刺繍が施された正方形の布と、あの隣人らしい一言だけのメッセージカードに思わず顔が緩む。
「メルシー、坊ちゃん。」
かぁ、と頬を染めた隣人を見れただけでも十分過ぎるほどのプレゼントだ。



『Happy Birthday』


作品名:Bon Anniversaire!! 作家名:akito