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Garçon inexpérimenté

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やっと着いた臨也の事務所の前。そこには臨也がガードレールに座って待っていた。ヘッドライトが臨也を照らすと、彼の前でタクシーが停車する。後ろの扉が開かれると帝人が車から降りた。帝人が振り返ると、臨也は運転手に支払いをし、車が去ると帝人を見てにっこりと笑った。
「いやぁ、すまなかったね!」
「すまないとかいう問題じゃ……」
「話は中でゆっくり聞くよ」
 臨也はそう言うと先を歩くので、帝人は従うように後ろを歩くしかなかった。オートロックの扉をくぐり、臨也の事務所内へと足を入れる。部屋の中は、住居を兼ねているとは聞いていたが事務所部分だからか、ひどくスッキリとした印象だった。
「まぁ掛けて待っててよ、今、何か飲み物を出すから」
「あ、はい」
 言われるままに返事をし、帝人はソファに腰掛ける。するとキッチンに向かった臨也の方向からゴトンという音が響いた。驚いて思わずキッチンの方を振り返った帝人を安心させようとしたのか、臨也は手に缶を二つ持ってキッチンからすぐに出てきた。
「ごめんねー。缶落としちゃったよ」
 臨也が片方の缶を帝人に差し出すと、帝人はそれを受け取った。そして臨也が手にしていた缶を開けてから、ふと思い出したように帝人に聞いた。
「そういえば炭酸モノって平気だった?」
「はい。あ、いただきます」
 言って帝人がプルタブに手を掛けた瞬間、プシュッという音と同時に勢い良く中身が噴き出した。
「うわっ」
 驚いた帝人が少し体を引いたが、飛び出した液体は帝人の服に被害を及ぼした。
「大丈夫? 帝人君」
「えぇ。そんなに濡れてないし」
「ベタつくでしょ? そうだ、シャワーでも浴びておいでよ」
「でも……」
「遠慮しないでいいから、ホラ」
 問答の後に、言われるまま浴室に隣接する脱衣所に押し込まれた帝人は、だんだん自分の体が糖分でべたつき始めたことに気が付いた。
作品名:Garçon inexpérimenté 作家名:おおとり