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ゴルベーザ
ゴルベーザ
novelistID. 23798
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Distorted Love 5

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―帝人Side―






『帝人が俺を必要と思ってくれるだけで俺は嬉しいから…。』

そう言って静雄さんは優しく笑った。不器用だけど何よりも僕を大事にしてくれる。
その優しさのおかげで僕の傷が段々と癒えている気がする。
最近は調子を崩すことも少なくなった。

……臨也さんの影も少しずつ薄まっていく。
忘れなきゃいけない。静雄さんのために。
でも、まだ忘れてしまうことに恐怖を感じている自分もいる。

こんな中途半端な気持ちのまま彼と居ては駄目だ。
彼の温もりに触れてそう感じた。僕は静雄さんの気持ちに応えたい。こんな僕を好きだと言ってくれたから…。

だから、自分で片を付けるんだ。臨也さんのことだけでなく、自分のことも全て。

まだ眠っている静雄さんに名残惜しさを覚えながら、ベッドを出る。
そして静雄さんの家に調和した僕の私物をダンボールへと積めていく。彼との思い出が壊れないように大切に。


「………帝人……お前何して……………。」

「あっ、起きたんですね。おはようござい「何してんだって聞いてんだよ!!!!!!!!!」

腕を強く捕まれた衝撃で持っていたマグカップが落ちて破片が散らばる。

「マグカップがっ!!!!」

「んなもんどうだっていいんだよ!!!どうして荷物まとめてんだっ!!!?」

「……………どうでもいい……?」

このマグカップは静雄さんと僕がまだ友達だった頃に、僕の用事で一緒に行った雑貨屋さんで買ったお揃いのマグカップだった。
静雄さんは満面の笑みで一生大事にすると言っていた。
……大袈裟だと当時は思った。その場の勢いで買った物で、極々普通のマグカップだったから。
だけど一緒に住みはじめた時、他の食器は全部ひびが入ったりしているなか、お揃いのマグカップだけひびが入っていなかった。何かを飲むときでも毎回嬉しそうにお揃いのマグカップを静雄さんは使っていた。だから僕も嬉しくて負けじとこのマグカップを使っていた。



それをどうでもいい……?

「……離して下さい。」

「あぁ?」

「いいから離して下さい!!!」

静雄さんは僕の怒鳴る声にびっくりしたようで力を緩めた。
その隙に僕は手を振り払い、まとめた荷物を持って玄関へと向かった。

「今までお世話になりました。ありがとうございました。」

力の無い声でそう言い残して僕は静雄さんの家を出た。


作品名:Distorted Love 5 作家名:ゴルベーザ