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とある柔道部の非日常

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柔道とは、礼に始まり礼に終わるものである。

よって、幾つかの決められた動作がある。

その中でも特に大事なことは、

1、道場に神棚が有る場合は、そこを向いてお辞儀する事
2、対戦する時は、互いに一礼し「おねがいします」という事
3、審判や目上の人の近くを通る時は、前を通らずに後ろを通る事
4、大将戦は必ず正座で観戦する事

と、いった基本の動作である。

そう、くどいようだがもう一度言おう。

「おい、俺の前を通るな。」

目上の人の前を通ることは、マナー違反だ。

「あら、もう居らしてたのですか。主将?」
「ふん、当たり前だ。それと、俺の前を通るな。」
「失礼、気付きませんでした。」
「てめぇ」
「ふっ、落ち着きのない。」
「・・・上等だ、畳の上に上がれ。」
「お柔らかに、」

しかし、なんというかアレだ。
この人を見ていると怒らせたくなるのは何故でしょう?

「時間は無制限。先に一本取ったほうが勝ちだ。」
「では、」
「「おねがいします!」」

挨拶をした途端に、風を斬るような速さで奥襟を狙われる。
すかさず、回避して相手の袖をつかんだ。

ぐい、

「なっ!?」

そのまま、袖を強く引けば胴体もこちらに寄ってくる。
その隙を逃さずに掴もうとした。

「―――っ!?」

だが、実際は・・・紙一重のところで相手がバランスを崩し、こちらに倒れかかってきた。

「痛っ!」
「・・・重いです。早く、退いてください。」

当然避ける間もなく、二人とも倒れこんだ。

「わるい、今退く」
「・・・」

素直に、謝った?
プライドの高いこの人が

「痛っ!」
「どうかしましたか?」
「足首が、」

見れば、元は生白かった彼の足首は痛々しいほどに赤く腫れていた。

「・・・保健室、行きましょう」
「行くったって、この足じゃ」
「ちょっと、失礼」
「うわっ!?」

私は彼を仕方なく横抱きにした。

「まて、幾ら何でもこれは・・・」
「グダグダ言うのは無しです。」
「でも」
「元はと言えば、私が無理に引き寄せたのが原因でしょう。運びます」
「わかった」

余程痛いのか、目尻に涙が滲んでいる。

その表情が私に、彼と初めて出会った日を彷彿とさせた。


―――――――1ヶ月前――――――――

その日は、酷い雨で残念ながら水捌けの悪い地面は桶のごとく雨水を貯めていた。
その中を、本を抱えた私は走っていた。

「・・・物音が」

通り過ぎた路地の方から酷い音がする。
気になって、奥まった路地裏を覗けば一人の金髪の男子生徒が5人ほどの連中にリンチに遭っていた。

「うぐ、だっだから・・・金なんか持ってねぇって何度」
「そうかい、だったらその小奇麗な体で払ってもらおうじゃないか!」
「っそ、そんな」
「その反応、そいつ絶対“処女”っすね!金原さん」
「ああ、久しぶりの上玉だ。」

下劣な言葉と、品のない笑い声がこだましている。
その中で、金髪の生徒は悔しげに唇を噛みしめて涙を堪えていた。

私は、思わず走り出した。

「なんだっ!?てめぇ」

どす、

「うっ、」

助走で勢いがついている拳を思い切り鳩尾に入れる。

まず、一人。

「てめぇ、何してやが」
「うるさい」

背後に回ってきた二人目を回し蹴りで

「このっ!」

ナイフを振りかぶってきた男の片腕を右手で取って引き寄せ、右足を大きく上げて刈る。

3人。

「う、あぁぁぁぁぁぁぁ」

4人目は、奇声を上げながら逃げた。

「く、来るな!コイツがどうなっても」
「どうにかなるのは、お前だ」

金髪の少年を羽交い締めにし、バタフライナイフを突きつける金原。
私はポケットから素早く、シャーペンを取り出してダーツの要領で金原の腕に放つ。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

驚いた拍子に羽交い締めが取れて、膝を付く金髪の少年。
その少年の手を取って、表通りの喫茶店に逃げ込む。

「はぁ、はっ・・・貴方はしばらくココに居なさい」
「でも、」
「片を付けに行きます。」

私は、そう言い残して雨の中に戻る。






そう、そのときに出会ったのがアーサー・カークランド今私が抱えている人物である。
あの時は、フードを目深に掛けていたため正体が私だとは分からないはずだ。


「もう、着いちゃうな」
「そうですね。」

もう、着いちゃう?
どこか、残念そうな口振りだ。

「なぁ、本田」
「何ですか?カークランドさん」
「お前、もしかして一ヶ月前・・・俺に会っていないか?」
「さぁ、どうでしょう?」
「―――っ!?俺、ずっと言いたかったことがあったんだ。」

まさか、気付かれていた?
嘘、そんなことって・・・

毎日が予想外、そんなのもきっと悪くない

そう、私たちの日常は始まったばかりなのだから。
作品名:とある柔道部の非日常 作家名:でいじぃ