臆病な心
そんな夢を見た。
目が覚めて、ああ夢かって安心して、それでも不安になって。
眼鏡をかけて兄のベッドを覗き込めば、いつもと変わらず寝ている兄の姿。
良かった。
間抜けな顔でむにゃむにゃ何やら寝言を言っている兄は、こちらの心配など知る由もない。あたりまえだけど。
その姿に異様に腹が立って、ぎゅ、と抱きしめていた。
そうしたら兄さんは目を覚まして、んだよ、ってちょっと不機嫌そうに言った。
それでも何の抵抗もなかったから、勝手に嫌じゃないんだなって判断する。
兄さん、好き。
小さい声で囁いてみた。兄さんは目をつぶっていたけど、多分寝てるふり。
少しずつ赤くなっていく顔を見て僕は腕の力を少しだけ強めた。
―兄さん、兄さんは僕が守るから。
―いなくなったりしないでよね
―芝桜―臆病な心