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如月ヒメリ
如月ヒメリ
novelistID. 13058
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臆病な心

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兄さん、って呼んで手を伸ばして、振り返った兄さんは痛々しく笑ってごめんなって言って、伸ばした腕をすり抜けて消えていく。

そんな夢を見た。

目が覚めて、ああ夢かって安心して、それでも不安になって。
眼鏡をかけて兄のベッドを覗き込めば、いつもと変わらず寝ている兄の姿。

良かった。

間抜けな顔でむにゃむにゃ何やら寝言を言っている兄は、こちらの心配など知る由もない。あたりまえだけど。

その姿に異様に腹が立って、ぎゅ、と抱きしめていた。
そうしたら兄さんは目を覚まして、んだよ、ってちょっと不機嫌そうに言った。
それでも何の抵抗もなかったから、勝手に嫌じゃないんだなって判断する。

兄さん、好き。

小さい声で囁いてみた。兄さんは目をつぶっていたけど、多分寝てるふり。
少しずつ赤くなっていく顔を見て僕は腕の力を少しだけ強めた。

―兄さん、兄さんは僕が守るから。

―いなくなったりしないでよね






―芝桜―臆病な心


作品名:臆病な心 作家名:如月ヒメリ