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子供は大人なんて信用するな〔銀新〕

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どうしてそうやって無茶ばかりするんですか?
投げ掛けられた言葉に、俺はいつものようにへらへら笑い返しただけだった。真っ直ぐ過ぎるそんなセリフはもう何年も前に皆諦めて言わなくなったものだ。
俺は胸の奥で何かどす黒い感情が渦巻いて、どろりと口から何かを吐き出したような気がした。良く考えればそれは血だ。そういえば、顔も殴られたんだった。
使い古された言葉なのに、どうしてお前が言うとこんなにも綺麗なんだろうな。
依頼の内容から、俺は多少なりとも腐りかけの勘を働かせて危険を感じた。だから大した仕事じゃあないと新八も神楽も連れていかなかった。俺はこうして肩に軽いケガを負ったが、今でもその判断は正しかったと思っている。寧ろ俺一人でもこの程度で片付いたのだから、いいじゃないか。
そう言ったら、眼鏡の奥の目がいっそう悲しそうに見返してきた。
ああ、なんて目ぇするんだよ。やめろよ。ギラギラと遠慮のないほどの感情を目にたたえ、涙をうっすらと浮べたそれはぬるりとしているんだろう。
見ていられなくなって顔を下へ向けたら、床に血の跡が残った。汚れた床を咄嗟に拭いたら、真っ赤だったそれは余計に汚い色になっていく。
その上に重なるように透明の水が零れ落ちたから、もう降参。それで更に擦ったら血の跡は何もなかったかのように消えた。
「今度は絶対、僕も行きますから!」
ああ、もちろん。決まってるだろ。銀さんももう痛い思いはごめんだよ。
とか言って、そんなの嘘に決まっている。お前はきっと俺の傍にいて、何かを得たくて来たんだろうけど。けど、そんなの俺がごめんだ。本当は鍵かけて、このまま何も傷つかず、何も知らないままでいてくれと思う。血なんて見なくていい。人の醜いところなんて知らなくていい。その為に命を落とすことなんてなんとも思わない。
そのくせ俺は血だらけで帰ってきて、誰よりお前を傷つける。自分勝手でどうしようもないこの行為に、お前は何の疑いもなく涙する。
矛盾しすぎている。つまりは俺が、俺自身が傷になりたいのだ。俺のために泣いて、俺の為に傷つくお前だけが欲しい。汚したいくないとか思いながら、同時に俺に包帯を巻く震える手を掴んで、そのままその細い首筋に噛みつきたい。それだけで興奮して、勃ってくる。たまらない。
駄目だとわかっているのに。

「新八、俺が帰ってこなかったらどうする?」

震えていた手は止まり、目を見開いて真っ直ぐこちらを見る。
薬箱は力の限り放られて、子供は涙と共に部屋を飛び出していった。きっちりしっかり露骨なまでの態度に笑うしかない。子供は大人なんて信用するな。