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勘弁してよ、静雄さん!〔静帝〕

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「最近、よく会うよな」
ぽつりと零した静雄の言葉に、帝人は悲しくなるよりも前に呆れてしまっていた。
この世に生まれて16年、恋に関してはめっぽう弱いし、経験なんてそれこそないから自信満々に言えるようなことは何もないけれど、それでもまさか静雄からそんな言葉を聞かされるとは思ってもいなかった。確かに一方的に好きになって、けれど友達なんていえるような仲じゃないから、放課後池袋の街を意味もなく歩いてはバーテン服姿の静雄を探し、見つけては恐怖と恋する甘い気持ちという謎の想いを胸に秘めつつ、毎回声をかけた。そしてこんにちはというただの挨拶から天気の話、そこから時間をかけて互いのことを話すようになり、時には静雄から帝人を見つけて声をかけてくれるようになった。そこから更に話すだけではなく、一緒に本屋に行ったり、ご飯を食べたり、今日は奢ってやるよなんて少し笑って、頭をくしゃりとなでられたりした。もちろん性別男同士であることから、これってもう付き合ってますよねなんてずうずうしいことを帝人も考えていたわけではもちろんなく、ただ、もう僕たち友達ですよねなんて確認するようなことじゃないから、すっかり帝人はそのつもりでいた。いや、本当は欲を言えば、好意くらいは望めるのかもしれないとか思ったりしたことがなかったわけじゃないけど。ただ、そういうわけだから、この(帝人の思うところの)逢瀬が、そんな偶然に会ったからということで実現していると静雄が思っていたなんて。会いたいから静雄を探してるに決まってるし、静雄だってそのつもりだと思っていた。確かに今まで互いに約束をしたわけじゃないけど。
さすがに酷すぎる。だってそんな風に言われてどう答えたらいいのか帝人はわからなくて、ただ身体の熱がぐんぐん上がる。舞い上がってた自分が恥ずかしいのもあったが、これはちょっとした怒りだ。そう、帝人は今始めて静雄に怒っていた。だってそれじゃあ、お前といると落ち着くって見せてくれた笑顔とか、頭を撫でられたあの感触とか、危ないってとっさに手を引いてくれたあのぬくもりだとか、どうすればいいのだ。手が震えて、何かと思えばじわりと目に涙が浮かんでくる。ああ、この場で泣いて静雄を困らせたいわけじゃないけれど。
「竜ヶ峰?」
顔を伏せたまま何も言おうとしない帝人に、返答を迫るような静雄の声がする。何か言わなくては。
「ぐ、偶然じゃないですか?」
ああ、何を言ってるんだろうと後悔したが、一度出てしまった言葉はどうにもならない。そうじゃなくて、静雄に会いたくて、だからいつも探してたってどうしてその一言が言えないんだろう。ちらりと静雄の方を盗み見ると、顔を真っ赤にさせている。ああ、何かきっと機嫌を損ねる一言だったのかもしれない。このまま他の人と同じように、自分も殴られてすべては終わるんだと帝人は覚悟した。
「だから、な、竜ヶ峰。これからはちゃんと、ケータイで連絡取り合って会わねぇか?」
頭が真っ白になるというを、帝人は体験した。
え?何、何を──。
顔を上げると、困ったような静雄がこちらを凝視している。
「お前っ…、泣いっ、泣くほど嫌なのか?」
その言葉に帝人は反射的に首を何度も振った。だって言葉なんてまだ出てこない。
「なんだ、脅かすなよ。つーか、じゃあ何で泣いてんだ?」
「う、嬉しくて…」
「あー」
静雄は頭を掻いて、どうしていいかわからないといった感じで視線をそらす。でもすぐその後に、帝人を引き寄せて、じゃあ泣いとけなんて言う。しかも頭を撫でてくれるスペシャルなおまけつきで。紛らわしいにもほどがある。本当にもう、この人は勘弁してくれないだろうか。