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あの日あったことを俺はまだ忘れてない。(じんゆき)

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「お前、いつまでここに篭ってるつもつだ」

それはまだ、宿海仁太の前にめんまが現れる前のことだ。
その日は暑く、扇風機はただ生暖かい風をかき回していた。熱気で頭はぼうっとして、仁太は仰向けに寝転がり、ただ天井を見つめている。
そこに割り込むようにするどい声がした。最初はそんなことあるわけがないと思ったが、仁太は横っ腹に蹴りを入れられ、やっとその声の主が松雪集だと認識した。たがその姿を目で捉えても、まだどこか夢のような気がする。実際、ゆきあつはもう何年もこの部屋に来たことはなかったのだ。
めんまが死んだあの日からじわじわと色んなものが壊れ、その最たるものが「超平和バスターズ」だった。誰もが気まずさを感じ、めんまのことを口にしない違和感に耐え切れず、自然とガラスが粉々になって散らばるように疎遠になったのだ。
壊れたのはそれだけでなく、仁太自身のこころにも言葉に出来ない痛みが残ったままで、終わりはこない。何もかもやる気はせず、それを理由にするべきなのかもうわからないが、高校受験に失敗し、滑り止めに受かった高校にも行かずじまい。今や自分に貼られたレッテルはひきこもりとなった。
「ゆきあつ、か…?」
確かめるようにそう聞いたが、他の誰でもないことはわかっていた。そうじゃなく、仁太は現実かを確かめたかったのだ。
「俺が誰かもわからないのか?」
感情のない声がそう告げる。だが、ゆきあつの顔は歪んで、どこか悲しそうに見えた。
「お前、何しに…」
言いながら仁太が起き上がると、ゆきあつもその場に座ってくる。もう昔とは違う。背が伸びて、自分が行くはずだった進学校に通うゆきあつは別人みたいに思えた。でもその顔には、昔の面影が見て取れる。懐かしさと同時に、仁太はやはり胸のどこかが痛む気がした。
「何の用だよ」
八つ当たりして履き捨てるようにそう言うと、ゆきあつは顔を伏せる。でも本当に何の用なのか仁太はわからない。一番疎遠になっていた相手だ。
もしかして泣いてるのか。
「…言っただろ。いつまで篭ってるつもりかって聞いたんだよ」
伏せたままの顔は表情なんかわからない。その声は責めている声なのに、仁太はやっぱりゆきあつが泣いてるように見える。
「関係ねぇだろ」
そういえば、今は何時だ。ゆきあつは学校に行ってておかしくない時間のはずだった。進学校をサボってまでそんなこと言いにきたのか。
「お前一人そうやって篭ってれば、同情でもされると思ってんのか」
「なんだよ。お前そんなくだらないこと言いに来たのか」
「くだらない?事実だろ。お前がどうしようともう……生き返ったりしないんだ」
その一言は、仁太の頭を一度真っ白にさせ、そして心の傷ははっきりとえぐられるものだった。
「てめえ!」
仁太はゆきあつのきっちりしめられたネクタイの掴んで、そのまま引きちぎるくらいの強さでひっぱった。そこで初めてゆきあつの表情が見える。苦しいのか、眉間にしわを寄せているが、まっすぐ自分を見つめ返している。
「好きだったんだろ。素直にあの時、認めてれば良かったものを、一生ここに篭って童貞決定だな」
「うるせえ!!」
仁太はネクタイを更にひっぱると、そのままゆきあつは床に倒れた。その上に覆いかぶさるように仁太も倒れこむ。仁太が起き上がろうとすると、ゆきあつは仁太のTシャツを掴んで引き寄せる。
「俺を代わりにでもしようって?童貞」
暑い。
熱気で更に頭はのぼせて、わけがわからなくなる。
「ああ、てめぇを代わりにしてやるよ」
ゆきあつのネクタイをほどき、きっちりしめられたシャツを仁太はひきちぎる。同時にボタンがはじけとんだ。
「それで?」
揶揄するようなゆきあつの言葉に、仁太は噛み付くようにその唇を塞いだ。予想外の柔らかい唇の感触に仁太は夢中になって何度も唇を重ねる。そのうちどちらともなく舌を絡ませ、唾液が零れるまで絡み合った。
「…ぁ…ん」
だが、ゆきあつの甘く零れた声に仁太は我にかえる。
ビビらせるつもりだったのが、シャレにならなくなっていた。
「何だ、もう終わりか?」
「……こんなん、傷の舐めあいじゃねぇか」
その言葉に、今度はゆきあつの傷がえぐられた。
二人は無言のまま、互いの顔を見つめ合う。先に仁太が顔を反らし、ゆきあつはその様子に仁太の肩を押しのけて立ち上がる。
そのまま、ゆきあつはネクタイを手にして部屋を出て行こうとした。
「ゆきあつ」
仁太が呼ぶと、ゆきあつは一度立ち止まり、
「いくじなし」
と言って部屋を出た。
結局、ゆきあつが何の用だったのかわからないまま、今日も過ぎていく。