Regret will not mend matters.
そもそもの発端はJKのカリーナ。そろそろ卒業後の進路を、と言う話になり、親と揉めた、というところから。
「ってゆーか、今でも急に呼ばれて学校すっぽかしてその後戻って補習とかしてるのに、もうこれ以上メンドクサイことしたくないから絶対に進学はイヤ」
という旨を親に伝えたら、学はいくらあっても困るものじゃないとか勉強したいと思った時にはもう出来ないんだとか言われてウンザリなんだとか。それに対して皆の助言を聞くモードに、カリーナは入っていた。
「確かに、親の言うことは素直に聞いていて損はない。親はとても大切、そして大切だ!」
そうだろう、と周囲に同意を促すキースの言葉には、トレーニングを続けているバーナビーだけが深く頷いていた。
「学校は大切ですけど、既にヒーローだからアカデミーっていうのも違いますしね・・・」
ぼそりと呟いたのはイワン。そうだね~、とやさしいパオリンの突込みを受けつつ、ずいっと前に出てきたのはネイサン。
「なぁに?就職先に悩んでるんだったらうち来る~?アンタみたいにカワイイ娘だったら秘書でもオッケ~よん☆」
それは遠慮しとく、と少々引き気味に返事をしてから、カリーナは残りの面子の顔を見た。
「俺からは特に・・・ギリギリのヒーロー家業で手一杯だからなぁ・・・これで食えるうちは他の仕事とか考えてないしなぁ」
冴えないアントニオの回答に苦笑して、残るバディヒーローに声をかけた。
「ハンサムは?そもそも目的があったからヒーローやってるだけに、当初の目的が果たされたらその後の暮らしも考えていたんでしょ、」
最初は。と付け加えると、彼は手を止めてカリーナの方を見て苦笑した。
「ええ、最初はそのつもりでしたよ。暑苦しいそこのおじさんに出会うまでは、ね」
ちらと虎徹の顔を見ると、んだよ、とわざとぶっきらぼうにそっぽを向いて見せて。
「な~んか皆リア充って感じ。私もヒーローすることに文句はないんだけど、な・・・」
「お前には叶えたい夢があるもんな~☆」
な、といつの間にか目の前まで来ていた虎徹に頭をぽん、と撫でられて、思わず上目遣いにその顔を見た。
「そ・それは――!」
あぁアレか、とカリーナのバイトを知る人間は微笑み、それを暴露されて彼女は真っ赤な顔をして否定した。
「た・確かにブルーローズの恩恵じゃなく実力で歌手になりたいとは思うけど、それだけじゃ生活できないし、それなりに軌道に乗るまでは副業というかちゃんと働くなり学生するなりとか思って」
あわあわと必死になって弁明する様子を見ながら、ネイサンが残る面子にこう言った。
「でもカリーナちゃん、しっかり屋さんだからバリバリ仕事しちゃったらアニエスみたいになりそうねぇ~」
確かに、と皆がやたら感情を込めて頷いたのを見て、余計なお世話!とカリーナは怒声を上げた。
「バリバリのキャリアウーマンになって、仕事が恋人よ!とか言い出しそうだなぁw」
火に油を注ぐ発言にカリーナはいっそう頬を膨らませて、失礼しちゃうわ!と女王様モード。腕まで組んでそっぽを向いて、明らかに不機嫌な様子。それを見て言い過ぎたか、と問題発言の主は困った顔をして頭を掻いて。そうしてふと良いことを思いついたのか、にんまり微笑んでこう言った。
「ま・お前さんが行き遅れたら俺がもらってやるよ、な!」
わしゃわしゃっと頭を無造作に撫でながら、恥ずかしげもなく彼は確かにこう言った。
【俺がもらってやるよ】、と。
脳内でその言葉の意味を理解するのに少し時間がかかり、気がついた時には顔中から火が出たかと思うぐらいに赤面していて、それと同時に思ってもみなかった言葉に今までもやもやしていた彼に対する気持ちがこみ上げてきて、溢れ出しそうで。あわててぐっと飲み込んで、それで我に返って彼女は一言こう返した。
「今の言葉、後悔しても知らないからね!!!」
はいはい、と軽い返事でひらひらと手を振るおじさんをじと~っと見ながらも、内心では冗談でも嬉しくて嬉しくて、彼女は思った。
――ヒーローの仕事、頑張ろう・・・他の男が良いなんて思えないぐらいに・・・!
作品名:Regret will not mend matters. 作家名:あけこ