Love and a cough cannot be hid
その衝撃告白は、女子会を燃え上がらせるには十分すぎる件だった。
つい昨日まで人気下降気味な自分自身に嫌気が差し、ウンザリするぐらいため息をついていた人間が。
昨日の今日で、ため息の理由が180度も変わるなんて!
女子会の3人はそんなキースの純粋な告白に興奮し、トレーニングも他の視線もそっちのけで彼に詰め寄り、問い質す。
どこの誰なのかとか、いつ出会ったとか、もう告白したのかとか、女子の大好きな恋愛トーク攻めをここぞとばかりに披露して。色好い返事がなかったキースに、3人は意気込んでアドバイスまでする始末。
ネイサンはイケメンの笑顔を武器にしろと。
パオリンは褒め言葉は嬉しいよと。
そしてお年頃のカリーナはスキンシップに弱い、と。
「自然な振る舞いでボディタッチよ!」
うっとりしながらそう言うカリーナまでを見きってから、キースは女子会のアドバイスを真摯に受け止めて力強く立ち上がった。
そんな、強い意志を瞳に点し、恋にひたむきに踏み出したキースを3人はきらきらした瞳で見つめていた。
そのせいで、全く気がつかなかった。
「こーいうのか?」
ふんわりと優しい感触では、断じてなかった。
がばっと後ろから強く抱きしめられて、あまりの不意打ちに変な声が出るほど驚愕して。
我に返った時、正面にいたネイサンとパオリンはさっきキースに向けていたような好奇の眼差しを向けていて、有り得ない事態を脳内がやっと受け入れた。
「なななな・・・何考えてんのよぅ~!!!」
顔から火が出そうないや寧ろ絶対出ている間違いないとまで思ったのにも関わらず、出ていたのは大きな氷塊が1つ。ヒーローをやっているとは思えない華奢な体を抱きしめたおじさんは、哀れ氷塊の餌食となりダウンした。
「あ~ららっ☆」
「こっちもこっちでアドバイスが必要そうねぇ~♪」
にやりと微笑んだネイサン。KOされたおじさんの横で呆然としている乙女に耳打ちをするや、その腕を掴んで隅っこに座らせて、伸びているおじさんを抱えてぽいっと彼女のひざに頭を乗せた。
「ひっ?!ちょちょちょっとこれどーいう」
「どうもこうも、そこで伸びてるおじさん、自業自得とはいえ誰が見たって要・介護でしょ?ちょっぴりコールドな氷で介護してあげて!」
それじゃ邪魔者はおいとま~という言葉を残して、ネイサンは皆を連れてトレセンを出て行ってしまった。
「そんな・・・介護って・・・」
そう言いながらも真っ赤な顔で伸びきったおじさんを見る。頭に大きなたんこぶが出来ているのを見て、やり過ぎたなぁ・・・と自責の念に駆られつつ、冷たい右手でそっと頭に触れて。
「・・・ごめん、ね」
意識のないおじさんにそっと、やさしいことばをひとつ。
ばっかみたい!と八つ当たりに蹴り飛ばしたラジカセなんて、既に忘却の彼方。
作品名:Love and a cough cannot be hid 作家名:あけこ