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<続>ぶかぶか☆キッチン

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前回のあらすじ:山田が相馬さんのキッチン服を借りました。



「……それで、これは一体どういうことなのかな?」

今、俺の目の前には、ホール服が一着あった。
しかもこの前着た男物ではなく、普段種島さんや山田さんが着ているような、所謂女物だ。

「折角なんで、相馬さんはこれ着て下さい!」

それを何故か得意げに差し出して、山田さんはそう言った。

「…いや、折角の意味がわからないから」

…いやもう、本当ね。
小鳥遊くんが着る分には似合ってていいかもだけど、俺が着たら似合わないだろう。
それに、面白くないし。
人が弄ばれてるのを見るのは楽しいけど、自分がこういう目に合うのはちょっと…ねぇ?

「…着てくれないんですか?山田、小鳥遊さんの時みたいに色々頑張りますよ?」

…頑張られても困るから。
そう心の中で突っ込むが、残念ながら口に出して言える程の勇気はなかった。

「…相馬さぁん…」
「……」

まただ。またこの瞳だ。
この子はもう、俺をどうしたいんだろうね…はなはだ疑問だ。
渋々制服を受け取ると、俺は着替えのために更衣室へと向かった。
もちろん、男の方にね。



「相馬さん、着方わかりますかー?山田、手伝いましょうか?」
「わかるから!いいから山田さんは外で待ってて?!」

俺、前小鳥遊くんに着せてあげたんだから、知らない訳ないでしょ?!
それは山田さんが一番よく知ってるはずなんだけど…まぁどうせ彼女のことだから、単に俺の着替えてるとこ見たいだけだろうけど…いや、それもある意味問題か。
更衣室に入って来ようとする山田さんをやんわりと押し退けて、仕方なく着替えを始める。

(スカートみじかっ!小鳥遊くんごめん…確かにこれはキツイや…)

心許ないスカートの丈は、スースーして気持ち悪い。
下にストッキングを穿いているものの、もうスカートが捲れないか気が気じゃないよね…女の子って、すごい。
そう思いながらも何とか着替えを済ませて、俺は恐る恐る更衣室のドアを開けた。

「相馬さーん!!」
「うわぁっ?!」

するとそれを待ち構えていたらしい山田さんが、物凄い勢いで飛び付いてきた。

「やっぱり山田の思った通りです!相馬さん、可愛いです!」
「ちょっ…山田さん?!それ、全然嬉しくないよ?!」

山田さんの嬉しそうな一言に、俺は思わずそう突っ込んだ。
だって、仮にも男に言う台詞じゃないよね…それ。

「ウィッグとメイクもしましょう!あ、ちゃんと詰め物はしましたか?お胸は大事ですよ!」

…あー…ダメだこの子、俺の話全く聞いてないや…

「ふんふん、ふーん♪」

山田さんは鼻歌を歌いながら、俺にメイクを施してゆく。
そんな楽しそうな彼女を見ていたら、何だかもうどうでもよくなってきて。

(…偶にはいいか、こういうのも)

ゆっくりと瞳を閉じて、彼女に身を任せた。




「ちょっ…アレっ!」
「…何も言うな、小鳥遊」
「でも…っ!」
「男にはやらねばならん時があるんだ。…察してやれ」
「そう言いながら佐藤さん、顔随分引きつってますけど?!」
また覗かれていたことを、珍しく彼は知らない。