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愛像模様

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誰にも云ったことはないが。

彼は相棒の外見を、普段口に出して評するよりは悪くないと思っていた。
自分が類いまれなる美形のためか、彼にはいまいち一般的価値観というものが分からないが、相棒の元恋人曰くあのような顔を甘い顔立ちというのだそうだ。つまりはそれなりに世間に通用するくらいには良いということだろう。
赤銅色の髪に、青の双眸。
赤毛に碧眼という組み合わせは割合にありふれていて、この街でも似たような色彩を持つ奴をよく見かけるが、あの男のように昏い色同士は珍しい。
いつだったか、本人は髪について錆ついた血みたいな色だと自虐的にこぼしていた。しかし、彼にとってはむしろ好ましい表現だった。血のようだなんて、大いに結構だ。
戦闘の中で見るその色ほど、彼を昂らせるものはない。
瞳は、青と言うより藍色だった。
希望を灯して輝くには暗い、光とは無縁のその色。
まるで相棒の性質そのものを体現しているようで彼には可笑しい。そんなことを口にしようものなら、一言どころか数分では終わらない皮肉だらけの言葉の羅列が襲ってくることは予測できるので、彼は今のところ沈黙している。
別に争いを避けたいのではなく、あれが特別弁が立つ男で、彼は自分がその反対だと分かっているからだ。彼は最初から不得手な手段で勝負をしようという愚か者ではない。誇り高いのだ。戦うなら力で圧したい。
あの男の容姿が比較的嫌いでないという事実に関しても、同じような理由で目下黙秘中だ。しかしこちらの場合は、どんな意味合いでの言葉が返ってくるか彼には予想できないから、口に出すのを避けていると言ったほうが正しい。
どちらにしろ、彼は相棒を肯定する言葉を吐いたことなど無い。内心の評価は別にしても、だ。
ともかく、相棒のよくする皮肉げな笑い方も悪くは無いと思っている。
一般的に、あのように世を眇めた眼差しで嗤う男が魅力的なのかどうかは彼には分からない。好かれるものではない気がする。少なくとも彼がそれをマイナス要素だと捉えない、その点が重要なのだろう。結局のところ、彼の嗜好にあの男はわりと合っているということか。髪も目も、態度さえ。腹立たしいと同時に。
だから、自分は。
そこまで考えが至って、彼、つまりギギナという名のドラッケン族はその美貌を苦々しく歪めた。

「どうした、ギギナ?ついに下等生物たる自分が、図々しく呼吸をしていることへの罪深さに気付いたか?」

気付いたのはもっと性質の悪い己の嗜好問題だ。

「煩い黙れ生物よりも廃棄物に近い眼鏡」

かといって相棒、つまりガユスという名の平凡な男への嫌悪感だとか蔑みだとか怒りだとか、そういったものがなくなるわけでは、決してなかったのだが。


作品名:愛像模様 作家名:ぺあ