BSR3宴の松ヶ原について妄想してみた。
「ぅあ!!」
「ぐっ…ッ」
とある戦場。
松永軍を迎え撃った徳川家康と石田三成は
その圧倒的な戦力の前に為す術もなく敗北した。
地面に倒れ伏した家康と三成の鎧は砕け、
刀傷と爆発による火傷でもはや体を動かすことさえままならない。
対する松永は、傷一つ負っていないどころか、息を乱した様子さえなかった。
「二人がかりでこの様とは…全くもって卿らは弱い。豊臣の旗は飾りか?」
両手を後ろで組んだ松永は、嘲笑を顔に浮かべながら
ゆるりとした足取りで、倒れた二人の許へ歩み寄る。
そして、三成の眼前に落ちた豊臣軍の旗を躊躇い無く踏み躙った。
「っ!…貴、様ァ…秀吉様の名を侮辱するつもり……っうぁ!?」
三成は激昂して叫ぶが松永は意にも介さず、三成の髪を掴んで顔を上げさせる。
「弱い者ほどよく吠える。覚えておきたまえ。」
まぁ、卿には最早必要の無いことかもしれないが。と、三成の耳元で囁くと
手にした刀の切っ先を三成の喉許に突きつけた。
「…や、めろ…」
刃先が皮膚を切り裂く寸前で松永は動きを止めた。
声の方へ振り向けば、三成同様動くことが出来ないはずの家康が
歯を食いしばり立ち上がろうとしていた。
松永は僅かに目を見開く。
「ほう…その傷で立ち上がれるとは…。少し卿を見縊っていたようだ。」
「三成から…離れろっ!」
「家、康…」
声を荒げた家康がボロボロの右腕を松永へ向けて突き出す。
渾身の力を振り絞って放たれた天道突きは、しかしいとも容易く松永の刀に弾かれた。
そして、一瞬で間合いを詰めると、松永は家康の頸を掴んで持ち上げる。
「っ!!…くっ…」
呼吸を奪われた家康は松永の腕から逃れようと必死にもがくが
力の入らない体では抵抗は無に等しい。
「だが卿は弱い。身体は成長したようだが他はどうだ?
私から見れば、戦国最強の威を借りて強がっていた頃と何ら変わらない。
一人では、何も出来はしない…」
「−っ!!」
家康の顔が一層歪んだ。
槍を捨て、拳で戦う事を決めた。
忠勝の力を頼りきりにしていた自分を恥じ、強くなる決意をした。
もう二度と、戦いに負けないつもりでいた。
それなのに。
敵に手も足も出ないまま一方的に攻撃を受け敗北するなど。
これでは松永の言う通りではないか。
(畜生…ッ)
このまま敗軍の将として死ぬのかと、家康が意識を手放しかけた時、
「…だ、まれッ」
三成の鋭い声が響いた。
「口を、噤めっ…それ以上の暴言を、許可…しない!!」
「み、つ…なり……」
伏したままの三成は、それでも凶王の形相で松永を睨みつける。
「くっ…これは、…愉快愉快。卿らは実におもしろい。」
松永はさも可笑しそうに笑うと、左手で家康を捕えたまま
右足で三成の背を踏みつけた。
「ぐっ…!!」
背後から圧迫され、苦しさに三成が呻く。
その背を見下すように眺めた後、再び家康に視線を戻す松永。
「さて…、卿は人と人を結ぶ絆を一番の宝と言ったね?」
「そ、…それが、何だと…」
松永の口元が大きく孤を描いた。
「それならば、卿からは絆を貰おう。」
キラ、と、その右手に携えられた刀が煌いた。
「…まさ、か…」
家康の背筋が凍る。
まさか、まさか。
「安心したまえ、直ぐに卿も冥府へ送り届けてやろう。」
そう言って松永が右腕を高く掲げる。
「や、やめろ!やめてくれ!!」
家康は必死に制止するがそれも虚しく、松永は三成の首を目掛けて刀を振り下ろした。
「三成いぃぃぃ!!!」
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作品名:BSR3宴の松ヶ原について妄想してみた。 作家名:壱村