雨とバランス
「なんで貴方が謝るんですか」
「ほら、俺ってその・・・雨男、だから」
「そんなこと気にしてらしたんですか!?」
「ずっと前から雨が降ったら俺の責任ってことにされてたんだ」
「貴方のせいではありません、この時期は私の国では雨がふりやすいのです」
シトシトと梅雨らしい雨が降ってくる
絶え間なく降り続けるその様子を窓越しに見つめる二人
「せっかく菊の家に遊びに来たのにこの雨じゃあな・・・」
「家のなかでもできることはいろいろあります」
「それは俺を誘ってるのか?」
「どうとられてもよろしいですよ」
クスリと含み笑いをする菊
「アーサーさん、貴方は雨が嫌いですか?」
「べ、別に嫌いってわけでもないがあまり好きではないな」
「私は好きですよ、雨」
何を思い立ったかそのまま外に出る菊
「おい、濡れるぞ!」
アーサーがあわてて追いかける
「雨がなくては大地は乾いてしまいます」
そうすれば花も咲けなくなるでしょう?と漆黒の瞳をきらめかせる
「なにもかも世界はバランスをとっているのです」
雨のせいで濡れた髪が艶めいた光をはなつ
「なら俺のバランスは菊で整えられてるんだな」
「どういうことです?」
「菊は恵みの雨ってことさ」
そう言いながらぎゅうと後ろから抱きついてくる
「濡れちゃったな」
「貴方もですよ」
「こっちの方がエロくてそそるぜ」
「この変態英国紳士・・・」
雨は絶えず二人を濡らしてゆく