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あっちゃん
あっちゃん
novelistID. 26969
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愛し方を覚えた数年後の1月

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「新羅」

名前を呼んで振り向いた瞬間に彼女の肩を掴み、自分の胸へと引き寄せる。
女の薄い肩だ。

「臨也。離して」
「なんで?」
「こんな姿見られたらセルティに誤解される」
「もう、いないデュラハンに操を立てるの?」

あの化物の事を口にすると、新羅は深い悲しみに目を伏せる。
新羅とは中学校からの付き合いだが、深い哀情を秘めた表情を見るのは彼女が幼い頃から愛して止まないデュラハンがいなくなってからだ。
それまでの彼女はあのデュラハンがいるだけで、どんな悲しみからも喜びを見出せていたから、思い返せば彼女の笑顔しか俺は知らない。そしてそのデュラハンがいなくなってからも新羅の感情の起因は彼女を置いていったあの化物なのだ。やっと新羅の前からいなくなったと言うのに、あの化物に新羅の心も一緒に持っていかれたようで化物に対する憎悪は消えない。

「君を置いていった男の事なんて忘れて、俺だけ見てよ。」

新羅の泣き顔を見るのも初めてだ。確か彼女は刺された時にでさえ笑っていた。

「新羅がずっとセルティ全てを愛してきたように、俺もセルティを愛して止まない新羅ごと愛しているから。愛するだけじゃなくて、愛されてよ。ねぇ、新羅愛してる」

とめどなく流れ出した涙をすくいあげ彼女をそっと抱きしめる。優しく慰めるように頭を撫でて、新羅が落ち着いた所でそっとキスをした。
あのデュラハンにはできなくて、俺が新羅に贈ることのできる愛情のキスを



孕んでしまえばいいのに。
ベットで静かに眠る新羅を見てそう思わずにはいられなかった。
新羅は一途だ。たった1つのものを深く愛し、そしてそれに付属するものも愛することができた。
興味のない人間だって、あのデュラハンが大事にしているそれだけで、新羅も大切にすることができた。
今までずっとあの化物だけを思っていた新羅の感情は少しずつだが、自分に向けられている。ならば、自分と新羅の子ができれば新羅はそれをとても大切にするだろう。
1度そう思ってしまえば、彼女が寝てる間に事情の後を片付けようと思っていたけれど、もう1度乱したくなった。
寝ている彼女の膣に指を入れて、自分が出したものをくちゃくちゃとかき混ぜる。
時折ビクリと跳ねる肢体に気分をよくしながら、眠る新羅の肢体に悪戯した。

ガチャリ
小さいけれども確かに玄関の開く音に、第三者の気配。今まで楽しかった気分が崖を落ちるよりも早くて底へと沈んでいく
折角の新羅との時間を邪魔しやがって。心で悪態をつきながらも手早くズボンを穿き愛用のナイフをポケットに隠し新羅の寝室を後にした。

「四木さんでしたか」

電気をつけずともカーテンの閉められていないリビングは月の光のおかげで相手の姿をくっきりとうつしだす。
白いスーツ姿の、新羅にとっても俺にとってもお得意様は、自分の姿を視界に入れた瞬間軽く眉を顰めた。

「折原さん何故ここに、と聞くのは無粋でしたかな」

上半身裸にベルトも締めず緩くズボンをはいただけの姿を見れば余程鈍くない限りは気づくだろう。ニヤリと口元に笑みを浮かべてその問いに答えた。

「それにしても意外ですね。貴方が誰か1人に執着を見せるなど」
「そうですか?俺は最初から新羅1人しか愛していませんでしたよ。四木さん俺はね、新羅に愛されるために化物になろうとしたけどなれなかった。だからせめてその化物を超える人間になろうと思ったけど人間に化物は殺せなかった。だけどね、俺は化物にならなくてよかったって思ってるんですよ。」
「首なしライダーがこの町から姿を消したのは貴方のせいですか?」
「静ちゃんもそうですけど、四木さんもこの町で起こる事は大概俺のせいだと思っていません?そのうち、こんなに地球が暑いのは折原臨也が裏で手をまわしてるからだって言われそうだと思いません?」
「そこまで言いませんよ。ですが、首なしライダーの件に関しては貴方の差し金でしょう」
「俺は新羅が悲しむようなことはしませんよ。ただ化け物が本当の化け物に戻っただけです」

容姿端麗なその顔が幸せに蕩けそうに歪む。

「四木さん。急患でしたら、腕の良い闇医者を紹介しますよ」

誰にも新羅は渡さない