きょうはなんのひ?
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只今の時刻、0:00。
あ、0:01。
私は早起きしました。
まあ言っても辺りは真っ暗、夜中だけど。
昨日から、否、1週間ほど前から寝不足になるくらいこの日を待っていたんだ!
今日のことを考えると今からでもわくわくがあふれそう。
遠足前の小学生みたいなテンションで隣で静かに眠る彼のほうへ手を伸ばす。
君は今日が何の日か知ってるかい?
ねえ、曽良くん。
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「――――さん、ばしょうさん、芭蕉さん!」
唐突にお腹にばーんって爆発したみたいな衝撃が走った。
少々の時間をかけて蹴りをいれられたんだと思いつく。
的確に鳩尾にぶち込まれた、痛い。
毎日のことではあってもさすがに痛い。
「いつまで寝てんですか、ばかじじい」
覚醒しきれていない脳をぐるぐる回して思い起こすけど、深夜からの記憶がない。
もしかして、まちきれなくて寝ちゃったんだろうか。
「おはよ、曽良くん……」
あれ、今日は。
「なんですか人の顔をじっとみて。気持ち悪い」
「いや、えー…?」
カレンダーをみると、今日の日付にぐりぐりと私が赤筆で書いたマークが入っている。
曽良くんには何の変化もない。
もったいぶってるのかな。
「早く支度しなさい、行きますよ」
「やっ!まっ、まって!」
いつもどおり曽良くんはため息混じりにそういうと、冗談抜きに私を置いていった。
「くそー、ぜんぜん思ってたのと違うじゃあないかぁ!」
ぐすん、と鼻をすすりながら急いで支度をする。
外に出たころには、既に曽良くんの姿は見えなかった。
「いっちゃった……」
とぼとぼと歩みを進めながら彼の姿を探すが、だいぶ差をつけられたのだろう、まったく見つからない。
いつもより早い。
彼はああみえても優しいから、いつもは置いてってもしばらくすれば見つかるところにいるのに。
「そ、らくん」
寝不足の頭がぐわんと揺れた。
すると、夏の透けるような空もぐにゃりと歪んで――――――――。
***
***
「何やってんですか、芭蕉さん」
目を開けると、眼前に曽良くんが飛び込んできた。
「――――はっっ!曽良くん!?置いてったんじゃ……!」
「まったく、何を期待していたんです。先日から夜更かしして」
「えっ、知ってたんだ」
夏の夜の闇のように、深い瞳が私を捉えている。
「今日は何の日か知ってる?」
「いえ」
「今日は海の日だよ!前曽良くんにいつ笑うのって聞いたとき海の日って言ったじゃん!」
「言ったのは芭蕉さんだけです」
「うぐ、そうだっけ」
「僕が笑うのは要らないものを処分したときです」
「あ……」
「全く……」
重い体を起こすと、再び空が歪んだ。
ちかちかした闇を開いた後に見えた曽良くんの横顔が、ほんのり笑みを含んで見えたのは、言ったら彼が怒るだろうから内緒。
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