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軌之坂留衣
軌之坂留衣
novelistID. 29830
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ユラメク

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決定的な事だった。




歌が、歌えなくなった。




どんなに頑張っても、綺麗な音が全く出ない。




今まで歌っていたことが嘘のように、その歌声には今までなかったノイズが重なっている。




マスターは、マウスとキーボードを駆使してどうして私がこうなってしまったのかを調べてくれている。




そのカタカタ、カチカチという音が、私のイノチのタイムリミットにしか聞こえなかった。




薄々分かっていた。




きっと、私はもう――――……




刹那、マスターの顔が、絶望に満ちた。




嗚呼、やっぱりか。




「ミク、落ち着いて聞いてくれ。お前に……」

「私のデータの中に、バグがあったんですね。」




いつもの通り、笑えただろうか。



マスターは、この時、私をデータ扱いしなかった。




『初音ミク』として、私を見てくれた。




嬉しかった。




最期のカンジョウが、『ウレシイ』で、よかった。




これが、『シアワセ』……。




もう私の末路は分かっている。




私の中のバグから他のデータを守るために、私をこの機械から完全に削除するのだ。




それはもう二度とマスターには会えなくなること。




それは完全に『私』という存在が無くなることを意味していた。




それはとってもカナシイ事だけど、仕方の無い事。




だけど最期に。




『私』という存在が消える前に。




    言わなくちゃ
                           ノイズが乗る
              機械仕掛けの声帯音で









伝えなくちゃ、今初めて、新しく知った、このキモチ。




その瞬間、私の頬に一粒の透明な、綺麗な液が伝った。




それは少ししょっぱくて、止めなく溢れてくるものだった。




                  コレガ、『ナミダ』……?




                  止め処なく溢れてるその涙に
                   「もういいの、いいよ」




ああ アナタの望む世界で
一つ影法師 消えてく
私を彩るの
真っ黒に 真っ白に
ユラメク




作品名:ユラメク 作家名:軌之坂留衣