【夏コミ】猫(?)がいる生活~発情期&二人の誕生日編~
【発情期の日】
「発情期だね」
一瞬何を言われたのか帝人はわからなかった。だから停止しかけた思考を無理やり再起動させ、「すみません、もう一度お願いします」と新羅に説明を要求した。
「発情期。猫……動物の本能だよね。自らの種を残そうと交尾に明け暮れる、そんな時期」
「えっと……つまり?」
「全くもって健康体。ただし初めての発情期に対処法を見出せなくて悶々としているだけだと思うよ。大方近所のメス猫に誘発されて発情期が来たんだろうね」
「ということは」
「セックスすれば問題解決。元気になるよ。身体も心も、アソコも」
セルティがいなくてよかったな、と帝人はしみじみ思う。もしもこの場に彼女が同伴していれば、混乱しながら首から影を盛大に噴出させ、帝人に臨也と離れるよう言い募っていただろう。
未だ顔を赤くし帝人の肩に寄りかかりながら、「はつ じょーき?」と若干舌足らずに呟く臨也に、帝人は深く、思いっきりため息をついた。
どうやら厄介なことになりそうだ。
臨也と暮らし始めて早三ヶ月。彼が一人で公園にいた所を拾って、成り行きで一緒に暮らして、いろいろあって、家出されて。紆余曲折あったが、今は何の問題なく二人仲良く暮らしていた……のだが。ここ数日、臨也の様子がおかしかった。
四六時中そわそわと落ち着きがなく、暇さえあれば帝人に抱きついてくる。もともとスキンシップは多かったが最近は今まで以上で、鼻先を帝人の身体に擦り寄せ、にゃあにゃあと鳴き声を上げ甘えてくる。人の言葉を話す様になってからは猫らしさが無くなっていたので、可愛らしいといえば可愛らしい。しかしこう何日も続くと、流石に帝人も戸惑いを感じざるを得ない。
困った時の神頼み、ならぬ新羅頼み。わからないことは聞いた方が早い、と臨也を定期的に診察してくれる新羅の元を訪れ、経緯を説明した後に下された診断が……『発情期』というわけだ。
一応、臨也と帝人は恋人同士である。分類的には猫と人間という違いはあるものの、臨也の身体は人間そのものなので、お互いに思い合ってる二人に障害はない……ないの、だが。
出会ってから三カ月。恋人になってから一カ月弱。
率直に言うなら、二人まだ性行為……セックスをしたことがなかった。
「ねぇ、臨也。大丈夫?」
「大丈夫……問題ない」
「そんな顔して言っても説得力ないから」
「うぅ……頭が、くらくらする」
ご丁寧に避妊具まで渡してくれた新羅の家から戻って来てから、臨也はずっとこんな調子だ。畳の上にぐったりと倒れ込み、未だ臨也は熱に浮かされたようにぼーっとしている。何度か声を掛けても、気の抜けたような返事しか返ってこないので、帝人も心配になる。しかし原因が原因であるため、下手に手を出すことができない。ネットで検索しても猫、しかもオス猫の発情期の対処法などのっていないので、臨也の熱が治まるまで放置するしかないか、と帝人は考えていた。
【以下本文に続く。本編内容はR18です】
作品名:【夏コミ】猫(?)がいる生活~発情期&二人の誕生日編~ 作家名:セイカ