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そうして僕は壊れてゆくのだ

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「だいおう」



空の闇に、僕の声が響く。

「だいおう、っ」

無機質。
反響する音、発せられる声に籠められた筈のどうしようもない衝動は消え失せている。

――在るのは

「…だい、」

おう、と続け掛けた言葉は途切れた。舌には苦味。
崩れかけた僕の脳味噌が、事実とは若干遅ればせながら改めて目前の景色を正常に認識し把握してしまう。

其処に在るとも知れぬ地に着いた感触を伝える褐色の腕、そこから伸びた千切れかけの掌。座り込んだ場所からは冷たい感覚を伝え、同時に自分とあの人、二人分の重みで潰れなくてはならない筈の尻肉も、いつもあの人が優しく撫でてくれる頭も、どす黒い欲と垢にまみれた獣の醜い手で鷲掴まれて。

「あ、あふ…ぇ、」

強制的に呑み込まされた部分が酷く痛む。

苦しい。
上も下も、前も後ろも。

解放された舌から存在価値の消え失せた白濁が垂れる。秘所からは汚らわしい男の子種。
せめてそこだけはと懇願するも虚しく、激しく蹂躙され続けている…にも関わらず、切れもしていない穴にほんの少し彼を恨む。しかしそれ以上に、濡らされるまでも無く男根をくわえ込んでしまう自分はなんと厭らしい生き物か。

鬼男は何とも言えない屈辱に唇を噛み締める。

「…、………!」
「………?」

酷い声で何かをがなりたてるような音が聞こえるも、何を発しているのか判別出来ない。ああ、ついに聴覚まで。
律動を受ける度まろび出た腸がぶらぶらと揺れ、半端な状態ではあるが文字通りかち割られた頭蓋に詰まったものがぷるぷると形を崩してゆく。
それらは元のように再生こそしないが、千切れても暫くは正常に機能しているようで。

(…まるで、だいおうみたいだ)

ぷちりとわたが踏み潰される痛みと内部から与えられる性感とに悶えながらも倒錯した幸福感につい頬が緩む。

ゆっくり、じわじわと時間をかけて注がれていたのであろうあの力。


“消えてしまって”尚、僕のナカに残っている大王が何より愛しい。



そして己の気付かぬうちに彼の細胞と結びついていたこの肉塊もまた、酷く愛しかった。





(…これからは、)

(ずっといっしょにいられます、ね)










『世界は終焉を迎えて』