No Name,No You, No Life
きっかけはなんだったのかと、昔むかしあるところにいた吸血鬼ヒバリンは考えたといいます。
そして、考えて別に、たいしたことではなかったなあとおもったそうです。
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吸血鬼ヒバリンとは通り名だ。といっても真名とさほど違いがあるわけではない。そもそも彼の名を呼ぶ存在など稀。もっと言うならヒバリン自身どうでもいいと思っていた。名前などより大事なものなんていくらでもあった。
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ある日吸血鬼ヒバリンは運命の出会いをします。といっても残念なことに金髪碧眼の美女ではなく、丸めて捨てたような、目が大きい男の子でした。弱々しくすぐ泣きそうなお顔の、チワワにも負けてしまう、世界最後の怪物使いでした。
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怪物使いと言う存在を意識したことなどなかった。邪魔であれば何でも叩き潰してきたのだし、ただ、生まれてはじめて一発殴ってきたのが怪物使いで、その怪物使いは殴ってきたくせに殺しもせず。二度と殴らせるななんていうから。吸い殺したいなあと思っただけ。それが生涯最後の食事になってもいいかもなあと。
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「世界最後の怪物使い」という名前に縛られるあの子に言ってみたかった。その名前よりも君の名前を。
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真名を教えてはいけません。こどもたちはみんなそうおとなたちに教えてもらうのです。それは怪物だろうと人間だろうと、怪物使いだろうとおなじです。でもみんな、こどももおとなもみんな「なぜ」をしりませんでした。
知っていたのは怪物使いの、王様だけ。
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ちょっまってえええ。
清々しい朝です山です畑です。どこからどう見ても農家。愛嬌を感じさせる屋根と、ちんまりとたつ風車。もう完璧な童話の世界そのままの美しい風景。
それなのになんとも悲しいこと。悲鳴が先程から響いて止みません。家の中ではおじいさんが吸血鬼に襲われています。
夜のベッドで大人しかしてはいけないことを、させられようとしているのです。
「やめて!ほんっとむり!」
「そういって今日で40年だサワダツナ。今年こそは真名を教えてね」
「この世はひろいなああああ!ホモでショタでジジ専のドエロ吸血鬼がいるうウウウウウウ」
「本当にね、全くコメディだ」
「ね!あなたにコメディは似合わないですよね!だからなんか世界対戦でも勃発させてくればいいんですよ!」
「じゃあ君の中で。君の雑菌と戦おうか」
「や、やめてこの体制、こ腰がこしがああアアアアアアっ!」
作品名:No Name,No You, No Life 作家名:夕凪