Music is My .....
テキサスの長い夏と共にだるい入院生活も終わりを告げる。ベトナム戦争で負傷してプレートを頭に嵌め込む事になったが、それ以外は元通りだった。新しい事業を起せる程度の保証金も入り、大手を振って家に帰れる。またあの大好きな音楽聞いてで暮らせるんだと思うと、思わず謳い出したくなる程だ。
だが、俺のお気に入りのレコードには傷が入った事が分かった。何度掛けてみても音飛びが俺を悲しませる。あんなに好きな曲だったのにもう二度と聴けないなんて・・・。だけど、それでも毎日聞き続け、そのうち音飛びは気にならなくなった。
そして毎夜繰り出すロックンロール。ゲリラライブにみんな悲鳴を上げて喜んだ。唸るギターに、スピーカーから大音出される音楽、マイクを振り回しシャウトを連発させる。スピーカーはいつも使い捨てだが、いい音を出すモノを探すのは楽しい。そんな事ばっかり続けて、兄ィは危険だからと言って怒るが、同じ店になんて行かないし、おひねりは多めに貰って行けば、機嫌も良くなるってもんだ。
それが十数年続いて、レコードの事もすっかり忘れていたが、DJの小娘が俺の歌を流した。いい音楽だった。だが、今まで気にならなかったあの音飛びが再び俺を掻き乱した。やっぱり俺一人じゃ、あの音楽は成り立たないんだ。
・・・そうだ、きっとこれは次の曲への合図に違いない。フィナーレを飾るにはちょうどいい。今度はちゃんとあいつも入れて最高の音楽にしよう。アンコールは期待できないけどな。
作品名:Music is My ..... 作家名:スミシー