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 例え腐っても鉢屋衆の末裔、周りと同じ、またそれ以上に特殊な経験もそれなりしてきたつもりだ。
 鉢屋本家から離れ、忍たまとして学び早4年が経ち、今5年目に入るに至って、もう今更特段驚くようなことは殆どなくなった。新鮮味がないというわけではないが、いずれも事前に勉強や思案をすれば何事にも戸惑うことはなくなった。

 話は変わって、今日は学年が変わり、各委員会がそれぞれ顔合わせをする初めての日だ。
 学級委員長委員会は、毎年名目こそあれど、生徒が集まることはなかった。そもそも生徒は殆ど他の委員会に所属していて、学級委員長委員会まで顔を出せないのだろう。今まで、例えば去年だってそうだ、学園長にいきなり呼び出されたと思えば、活動だと言って他委員会の顔合わせの時間に2人で延々と茶を飲んでいた。あれは学園長の長い話に付き合わされただけで、得たものは謎の満腹感だけだった。
 だから驚いた、学園長から「今年は1年生から2人入るぞ」と聞いたときは。
 今年は例年よりもとりわけ人数が多いと聞いたから、学級委員長委員会まで人が回ったのか、と嬉しい気もしたが、その反面、どうにも不安だ。如何せん、上級生となると、長屋も遠くなり実習も増え、他の同輩のように委員会に入らなければ、下級生との交流が殆どなくなる。それに加えて、そう積極的になってきた覚えもないもので、下級生の扱いを、情けないことに心得ていない。
 兵助や八左ヱ門の話に聞くところによると、年下だからと言って侮る勿れ、気難しいものだと言う。その上、まだ幼いと言えど、級長を任されたはずの者なのだから、気を強く持った真面目な子達なのだろう。とは言え、あくまで齢は10歳。青い部分だって多いはずだ(と、大差なく若輩者の自分が言えたことではないが)。

 ———さてどうしたものか、兎に角、会って話してみないことに結論は出ないだろう。

 召集で指定された場所は、いつも先生方が会議で使っている部屋だった。他の教室よりも狭く、必要最低限のスペースと机と道具棚以外に何もない。刻限よりも早く行けば案の定誰もおらず、それに少しホッとしつつも、とりあえず茶の用意をする(学園長がいらっしゃるのならば必要だからだ)。湯沸部屋が近くて便利だとは思ったが、それ以上でもそれ以下でもなかった。
 湯を沸かしている間、こちらの部屋の窓を少し開けて換気すると、湯呑みを予め学園長から言われた人数分用意し、しかしいつ来るのやらも分からないためにそのままにした。
 手持ち無沙汰で、仕方なく開いている窓の外を眺める。日は落ちかけていて、茜空が何とも物悲しい。
 かたりと戸が開く。
「失礼します」
 幼い容貌に似つかわしくない、しっかりとした口調だ。
「学級委員長委員会の活動部屋は、ここで間違いありませんか?」
「そうだよ。名前を教えてもらえるかい」
「1年は組、黒木庄左ヱ門です」
「私は5年ろ組鉢屋三郎だ。よろしく」
 とりあえずニコリと笑ってみせるが、どうにも黒木は表情が動かないタイプらしい。会釈だけを返された。
「失礼します」
 続いてまた戸が開き、まだ変声期前の高い、だけどしっかりとした声が響いた。
「遅れてしまいすみません。1年い組、今福彦四郎です」
「いや、まだまだ全く時刻じゃないから、気にすることはない。むしろ」
 まだ学園内の地理だって把握しきれていないだろうに、よくこんなにきっちり移動出来るものだ、と言う手前、幼い声に被さって言葉は消えた。
「は組のくせに、随分器用なんだな」
「別に。たまたま早く終わって、場所を土井先生に聞く余裕があっただけだよ」



(以下続かない)
作品名:(no title) 作家名:若井