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不思議な国の燐

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その日、燐はいつものように授業をサボり、芝生の上で眠りこけていました。
 ふと目が覚めると、自分の横を、眼鏡をかけた真白い雪うさぎが走り抜けていきました。
 そのうさぎはひどく慌てていました。
「急がないと、授業に遅れるっ……!」
 時計で時間を確認しながら、そんなことを言います。そして目の前を走っていきます。
 好奇心をいたく刺激された燐は、雪うさぎを追って走り出しました。
「待てえぇぇーっ!」
 うさぎはかまわずにとっとと先に行ってしまいます。
 燐は必死に追いかけました。
 すると、うさぎは扉を開けてそこに入っていったので、燐が追いかけて中に入ると、何故か落っこちてしまいました。どこまでも、どこまでも。

 着いたところは、どこだかまったくわからない場所でした。
 テーブルの上に剣が置いてあって、『抜いて』と書いた紙が貼ってありました。
 そこまでの段階でいろいろとあったため(省略)、涙の池に沈みそうになっていた燐は、その剣を抜いてみたところ、全身が青い炎に包まれ、涙なんか蒸発してしまいました。
 なんとかなったものの、おもくそ気分が悪かったので、元の通りにしまって持って歩くことにしました。
 それでも、いったん身にまとった炎は、ついたり消えたりしました。

 それから歩いて、ぱったり見失っていた雪うさぎに会うと、うさぎはミネラルウォーターを持ってくるよう頼んできたので、とりあえずそれを持ってこようとうさぎの家に向かいましたが、燐はそのことを途中ですっかり忘れさってしまいました。

 何故なら、途中でイモムシならぬ、可愛い蝶々に出会ったからです。蝶々は、『あなたはだぁれ?』と言いました。燐はうまく答えられないことに気づき、『俺は俺だ』と答えました。そうして少し話をしました。そのうちに、青い炎を制御できるようになっていました。

 蝶々と別れて、今度はこうしゃく夫人に会いました。夫人は『あんたは知らないだけ』だと言いました。燐は、そんなもんか、と思いました。

 ぶらぶらしていたら、子猫に会いました。勝呂と志摩も一緒でした。にやにやしているのは志摩ひとりです。『何か面白いことはないか』と尋ねたら、お茶会の情報を得ました。そこで、燐はそこに向かいました。

 帽子をかぶった変な男が、お茶とお菓子を楽しんでいました。燐も誘われましたが、一緒にいるのがアマイモンとネイガウスだったので、げんなりしてやめました。

 なんかよくわけのわからない頭巾をかぶった三人がいてわあわあ言っていましたが、それはそれとして、偉そうな女に会いました。ゲームに誘われて、負けると飯をおごらされるということでした。それよりも、燐は再び雪うさぎに会えて、『そういえば、こいつを追っかけてたんだっけ』と思いました。
 でも、それどころではありません。
 ゲームを始めたら、偉そうな男が現れたり、処刑の話だの、ケンカだので、休まるひまもありません。

 さて、ちょっと飛ばして裁判のお話ですが、帽子を被った男が、ずいぶんと出しゃばったと思います。
 燐は『誰がてめぇらのことなんか気にするか』と言い、ちょっとひんしゅくを買いました。

 でも、コレ、結局夢オチですから。

 燐は目が覚めて、ふわぁと大きなあくびをして、「よし、雪男を追い抜くぞー」とか決意を新たにする、平和なある日の、夢のお話でした。


作品名:不思議な国の燐 作家名:野村弥広