もう一回
「だめです、これ以上は体に毒です」
「けちくさいこと言うなアル」
紹興酒の壺を奪ってツンとしているのが菊、その隣でグダングダンに酔っているのが耀だ
「耀さんのためを考えて言ってるんです、素直に従ってください」
「・・・・・耀さん、なんて呼ぶなアル」
ムスッとした声が返ってきた
「昔は菊も可愛かったアルね、ワタシの真似ばっかして後ろをちょこちょこついてきて・・・」
バッと菊の顔が赤くなった
「い、いつの話をしてるんですか!」
「にーに、って読んでくれてた頃が懐かしいアルよ」
フゥとため息をつきながら言う耀の顔に嘘はなさそうだ
「私も、もうそんなこと言う歳じゃないですよ」
「にーにって呼んでくれなきゃ嫌アル!!」
「いい歳して我がまま言わないでください!」
「菊の意地悪・・・」
それ以降シン・・・と辺りが静まり返った
菊がどうしたことかと耀の方を覗き込むと
「スースー」
と寝息をたてて夢の中へと入りこんでいた
「にーに、ですか・・・」
たしかに昔はそう呼んでいた
彼のことが大好きでたまらなかった
「もう呼んであげませんからね・・・にーに」
すると、小さな声でつぶやいたはずなのに耀が起きた
「久しぶりに聞いたアルよ」
菊は自分の顔がカァッと熱くなるのを感じた
「ね、寝てなかったんですか・・・」
「もう一回呼んでほしいアルよ」
「・・・・・・・また今度ですっ!!」
そう言って彼に抱きついておいた
この気持ちが伝わるといい、そう思いながら