リングを通したネックレス
アクセサリー等のおしゃれを一切しない帝人ちゃんの首元に控えめに光るチェーンを見つけて、思わず声をかけた。
「あ、は、はい。波江さんとこの前買い物に行ったんですけど、選んでもらったんです」
「はぁ?!なんで波江なんかと買い物に行ってるの?!彼氏である俺と行くべきじゃないっ!!俺全然聞いてないよっ!!」
確かに最近忙しかったけれども、帝人ちゃんとデートする時間を削らなければいけないことなど何一つない。
「いえ、僕からお願いしたんです。大人の女性としての意見が聞きたくて...」
センスいいですから。という帝人ちゃんに、確かに女性同士での買い物も必要かな?とも一瞬思いもしたが、やっぱり自分を差し置いて出かけたという事実に多少のモヤモヤを感じる。
「ふーん。それで女同士で何を買ったの?そのネックレスだけじゃないんでしょう?」
「ふふ。コレだけですよ。だって、これを買うためだけに付き合ってもらったんですもん。...まぁ、報酬は高くつきましたけど」
矢霧君の写真、張間さんの隙を見て撮るの苦労したんです...と苦笑混じるに教えてくれた。
「そうまでしてネックレスしか買わなかったの?折角だしいろいろ買ってくればよかったのに」
俺以外と出かけたモヤモヤは消えなかったけれども、欲のない帝人ちゃんにもう少しくらい欲があってもいいのにと思わず口からそんなセリフが出てきた。
「いいんです。....1年間大事なモノを大切につなげておいてくれる大切なチェーンをどうしても欲しかったんです」
「へ?って事はチェーンだけ買ったの?大事なモノって何?」
ネックレスだとばかり思ってた買い物はどうやらチェーンだけだったらしい。
首元で光るチェーンを静かに引っ張ると先っぽにチェーン以上に輝くプラチナリング。
「あれ?これって...」
「はい。指にはめるまでの1年間チェーンに守ってもらおうと思って...」
それはこの前贈った婚約指輪だった。将来は帝人ちゃん以外に考えられなかったから、卒業したら永久就職してほしいと贈ったもの...。
「あ~もぅ!!帝人ちゃんってどうしてそんなに可愛いの?!!帝人ちゃんラブっ!!愛してるっ!!でもねっ!そういうチェーンも俺がしっかり選ぶからねっ!!ほら、今から買いに行くよっ!!!」
「え?!ちょ、ちょっと待ってくださいっ!!待ってくださいったらっ!!」
感極まった俺はそのままお気に入りのコートを羽織ることもなく、帝人ちゃんの手をひいてマンションを飛び出したのだった。
___1年間は指輪をチェーンに
その後は左手の薬指に...____
作品名:リングを通したネックレス 作家名:雲月 ルカ