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龍吉@プロフご一読下さい
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君と僕と交差点

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君と僕と交差点




僕が持っていないものを、持っている君。
それだけで、君は光り輝いて見えるのに。





「俺は、コアメダルを砕く」
そいつは、俺の目を真っ直ぐに見てそう言った。
「これ以上、誰も完全復活も暴走もさせないために」
「……お前の、言いそうな答えだ」
既にコアメダルを砕かれ、完全復活出来ない自分は、最早こいつにとってただの障害物でしかない。自分の体が、砕かれたメダルの分だけ軽くなっていくのを、なす術もなく感じていた。

自分の、メダルの数。
それは、自分の存在そのもの。

完全復活が叶わなくなった今、こいつに立ちはだかる理由なんてなくなっていた。逃げて、逃げて、逃げまくって、見つからないように隠れて生きていればいくらでも生き永らえられる。
なのに、そうしようとはとても思えなかった。

グリード化した、あの左手。
グリードである、この右手。

全く正反対にいた筈の二人なのに、何時の間にか同じところにきてしまった。

言う権利なんか、ないんだろう。
だけど。

どうして、グリードなんかになっちまうんだ。
お前は、お前のままでいいはずなのに。


何時の間にか殴り合いになって海の中に叩き込まれる。オーズの力を使っている間に鍛えられたのか、グリードである自分と互角の力だ。口の中に、微かな血の味としょっぱい海水の味が広がる。
胸ぐらを掴まれ、顔を付き合わせられる。怒りに満ちた顔。
「お前の欲しいものって、なんなんだ!!力か!?」
グリード化が進んでいるせいか、こいつの声で体が、コアメダルが、びりびりと震える。

欲しいもの。
少し前までは、コアメダル。完全復活することだけが、自分の欲望の向かう先だった。

だが、一度完全に復活した時、この体を満たしたもの。

それは、どうしようもないほどの虚無感だった。
所詮、完全にコアを揃えたところでグリードはグリード。果てもない強欲に突き動かされるだけの、ただの「ナマモノ」だ。

生きることすら、出来やしない。

胸ぐらを掴む、肌色。借り物の肌色で、掴み返す。
触れた指先に、手首で脈を打つ振動が伝わってくる。衝撃とも言えるその力強い拍動は、自分が決して持ち得ないものだ。
「もっと、単純だ……世界を、感じられるもの」

お前は、持っているから知らないんだ。
ただ存在するだけで、生きることすら許されないこの絶望を。

俺が欲しいもの。
それは、

「命だ!!!!」

体の上にのし掛かる、自分より少しだけ重い体を殴り飛ばす。
殴った手が、悲鳴を上げる。
「命が欲しかったら、他人の命も大切にしろ!!」
殴り返される。殴られた顔が痛い。疼くような、後を引く痛み。しかし、殴られた顔よりも胸の方がもっとずっと痛いし、苦しい。

お前は、何にも分かっちゃいないよ。

服が水を吸って重い。
全身に服が張り付いて動きにくいし、あちこち殴られてぼろぼろだ。でも、今止まるわけにはいかない。

お前の願いを叶えたいのに。
お前と一緒にいたいのに。

どちらかを取れば、片方の願いが零れ落ちて行く。
自分の願いのために、他人を気遣うなんて、グリードの俺にはとてもできない。こんなに入り組んで複雑な感情、抱えきれないよ。
元から人間で、そんなに強い命を持ってて、はじめっから生きてるお前が、俺の気持ちが分かるもんか。

「分かるよ」

思わず、息を呑んだ。
真っ黒な、少しだけの笑みを浮かべる瞳。
「ていうか、分かった」
グリードに、なりかけているから。
苦笑いのような顔でそいつは笑う。

そんなことなら、分かって欲しくなかった。

俺は人間に同化しすぎたのか、段々と人間に近くなっていた。
このままでいれば、人間になれるんじゃないかと思えるほどに。ただ一つ、大切な命という器官が抜け落ちたままで。

馬鹿な夢だった。

なら、こいつをグリードにしてしまえば、ずっと一緒にいられるんじゃないか。

紫のコアメダルを流し込まれて、完全にグリード化したそいつを見て、その考えも立ち消えた。
俺が一緒にいたいのは、我を忘れコアメダルを破壊するだけの化け物じゃない。ただ俺の名前を呼んで、人助けしたがって、なんもかんも自分で背負いこんでしまうような、お人よしの日野エイジ。ただ一人だ。

グリードになんか、ならせはしない。
一つ、咆哮を上げて自分もグリード化する。

絶対に、止めて見せる。
どちらかが欠けた世界に未練なんか抱かないから。


どうせ終わるなら、俺の手で終わってくれ。



どうせ終わるなら、お前の手で終わらせてくれ。