星に願いを…
何故ならば本日は7月7日。七夕の日。
そのため、園児たちは先生から短冊とペンをもらい各々と席に着き短冊とにらめっこしているのだ。
竜ヶ峰帝人もその園児の中の1人である。帝人の小さな手には先ほど静雄先生から貰ったペンが握られているが一向に動く気配を見せないまま、もう随分たっている。
隣に座っていた正臣と言えば席に着いた瞬間に手にペンをとり『せかいじゅうのびじょがおれのかっこよさにきづきますように!!』と書き、杏里先生の元へと駆けていった。
今もまだ杏里先生の元で『あんりせぇんせぇー。おれとけっこんしてっ!!』と、もうアタック…と言うか全力でプロポーズしている。
帝人はそんな正臣の様子に1つ大きなため息をつき、再び短冊に向かった。
すると、1人の真っ黒な服を身
にまとった園児が帝人の所へやって来て先ほどまで正臣が座っていた席に腰を下ろした。
「いざやくん…」
帝人が名前を呼ぶとその男の子はにっこりと綺麗な笑顔を作った。
「どうしたの?そんなに固まっちゃって。」
臨也は帝人の様子を見てクスクスと笑った。
「………えっと…。臨也くんはもう、お願い決まったの…?」
「あー…あれねぇ……。適当に書いといた。とりあえず…って事で。帝人君は……その様子だとまだみたいだね。」
「えっと…。うん……。」
「帝人君も俺みたいに何か適当に書けばいいんじゃない?」
「うーん……。
………えっとじゃあ……。」
そう言うと帝人は小さな手でペンを握ると一字一字丁寧に書き始めた。
臨也は帝人が書き終わったのを観ると「何書いたの?」と、聞いた。
すると帝人は小さく何かを呟いた。
「えっ?何…?なんて言ったの?」
「……ぃ、臨也くんと……」
「俺と?」
「これからもずっと…仲良しでいたい……って…」
そう言うと帝人は手に持っている短冊をギュッと握り下を向いた。
「帝人君…。
そんなの願わなくても良いよ…。」
「……えっ?」
帝人は臨也の言っている意味が分からないのか顔にクエスチョンマークを着けながら臨也をみた。
「俺は、一生帝人君から離れるつもりはないし…。帝人君の事を手放すつもりもないよ。
…帝人君こそ、俺から離れないでね。まあ、逃がさないけど…」
そんな臨也の告白じみたセリフを聞いて帝人の顔はみるみるうちに赤くなっていった。
「は…なれないよ……。僕も…ずっと側にいたいから……」
「うん!
じゃあ、飾りに行こっか。短冊。」
臨也は立ち上がり笹の葉がある方へと歩こうとした瞬間に後ろからキュッと引っ張られた。後ろを振り替えると帝人は先ほどかいた短冊を臨也の方へと向けていた。
「帝人君?」
「臨也くん…。これ…あげる……。
だって、これはお星さまにお願いするんじゃなくて臨也くんにお願いすれば叶うんでしょ?
だから、臨也くんが持ってて…。」
「……うん…。ありがとう…帝人君……。」
臨也はまだ幼稚園生とは思えないほどの大人びた柔らかな笑みを浮かべた。
「帝人君…。絶対に大切にするから……」
そう言った声は小さく弱く帝人には聞こえる事は無かった。
だけど、臨也の決意はとても硬く強いものだった。
そして二人は一緒に臨也の短冊をつけにいった。
「あ!
そういえば臨也くんはなんて書いたの?」
「秘密♪」
「むーっ!ずるくない?」
「まあまあ何時ものことでしょ?」
二人が会話しながら臨也がつけた短冊には“帝人君と一生一緒にいられますように”とかいてあった。
その日の夜はとても綺麗な星が輝いていた。