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天使

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白い肌と赤い目、体躯は見上げるほどだが筋肉の絶対量に劣る。日光に弱く、体も強くはない。
本人の努力で父親と強盗を殺害した程度の腕っ節はあるが、彼を蹂躙した犯人らが何人いたかは定かでない。
本人が言うはずもなく、司教も尋ねなかった。
「…神への冒涜だ……」
罪を恐れ、異常と思われるほど慎ましい彼だ。ガタガタと震えながら自らの姦淫を悔いていた。
「シラス、君が悪いのではない。」
「……どんな理由であっても、主であるイエスの教えに反するようなことを…」
私はオプス・ディの司教だ、と彼は思った。迷う者には与えることが出来る道がある。
人を殺めた罪はイエスの教えを学ぶことで赦された。次は何をすればいい、道はひとつだ。
「シラス、神に赦しを請いなさい。修行僧となって神に祈りなさい。」
シラスに出会ったとき、彼はもう随分大きかったけれど、まるで実の子のように思っていることに代わりはない。
他人の罪を告白しないシラスだが、けして幸せな人生であったとは言えないとはしっている。
君は天使だと、こどもに親がいうようなありふれた台詞に赤い目を泳がせ、最後には泣き出したことを思い出す。
オプス・ディの教徒の中にも結婚をし、家庭を築いているものが多くいる。
来世の幸せと引き換えに今世を不幸せに過ごす必要などない。
この子の人並みの幸せを心から祈っていた。
「主のご加護を」
額に十字を切ってやる。
救いを見つけた天使が、気が滅入るほど真っ直ぐにこちらを見た。
 
 
足を引きずって歩く修行僧に声をかけると、彼は振り向いて目を輝かす、
「司教!」
鞭の跡があるのだろう。背中を庇うような様子も痛々しい。
「……話がある、部屋まで。」
「はい、」
導師の話をするつもりだった。彼に罪を負わせるとしても、彼は必ず引き受けてくれるだろう。
司教のために、神のために。成功のあかつきには、評議会がシラスの幸せを保障してくれるだろう。
司教は偉大な行いとともに、評議会での発言力を手に入れるはずなのだから。
「アンガローサ司教…?」
彼を伴い部屋に入る。
「座りなさい。」
粗末な木の椅子に座るとき、彼はまた眉を寄せた。
くるぶしの辺りまで血が流れる。
「大事な話だ、外しなさい。」
「……はい…」
シラスは辺りを見回し、簡素な十字架が掛けられた壁の前にひざまづく。
衣服を捲くり上げ、太ももに巻き付いた帯を外す。プツン、プツンと鎖に絡み付いた肉が離れて行く。血がまた数行床を汚す。
白い肌に流れる真っ赤な血。蠱惑的というか寧ろ神秘的と言ってもいい。おおよそ人間らしくはない光景だ。
「司教……?」
ちゅっ、と音を立てて手にキスをして、振り返ったシラスが不安げな顔をした。
「君は本当に天使なのかもしれない…」
「……?」
「神に遣わされたものとして、役に立ってはくれないか?」
彼は小さく、だが厳粛に頷いた。
作品名:天使 作家名:まりみ