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おはよう。

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朝一番の電話は、入学祝は無いのか、という不躾なものだった。
「君は少し常識と言うものを弁えたらどうだ。朝一番に人様から贈り物を強請ろうなどとずうずうしいにも程がある、身の程知らずめ!」
「お前なァ、昼間は仕事、夜は老人並みにとっととベッドの中に入ってるくせに、朝も連絡取るなってどういうことだよ。」
文句を言っているにもかかわらず、どこか陽気な声にクラピカは大きくため息を付いた。
「分不相応な大学に入れたとあまり浮かれていると、入学してから置いていかれるぞ」
「本当にお前は失礼なことしか言わねえな」
「ありがたく思え。」
ばっさりと斬って捨てた言葉に、やはりレオリオは嬉しそうだった。
「まだお前から、祝いの言葉も聞いてないんだぜ。クラピカ」
「……そうだな、おめでとう」
ヨークシンで離れた後も、レオリオが大学入学のために努力してるのは知っていた。ハンター証を持っていればそれだけで招いてくれる大学はいくらでもあるはずなのに、レオリオはそれを良しとはしなかった。そんなレオリオは、友人としても仲間としても誇らしかったし、クラピカからしたら眩しすぎるほどだった。
復讐だけを誓い、それでもどこかで仲間に気後れするクラピカを、レオリオは時折こうやって無駄な電話を掛けてきては引っ張ってくれる。
「なあ、会えないのか。大学が始まる前に、俺がそっちに行くことだってできるんだぜ?」
「生憎だが忙しい。」
「本当にお前はよ……」
「医師免許が取れたらそのときは直接祝いに行ってやろう。大学入学など最初の一歩だろう」
「お前にとっちゃそうかもしれねえな」
むくれた声で不平を言うレオリオに、クラピカは苦笑した。
「本当に、よかったと思ってるんだ。でもどうしても、今は時期が悪いんだ」
ガタガタになったノストラードファミリーを支えているのは、実質クラピカだ。ネオンの力が消滅してしまった今となっては、最早このファミリーに有力な資金源は無い。ライトは必死になって娘の不調を隠しているようだが、それもそろそろ限界だろう。弱ったファミリーを亡き者にしようとやってくる不届き物もあとを絶たないし、単純な仕事の多さではヨークシンを上回っているかもしれない。
「……大学生活は6年もあるんだぜ?」
「君がおじさんになってしまうな」
「お前はいちいち一言多い……もうちょっと労わってくれよ」
レオリオが、小さく弱音を呟いた。しかたないじゃないか、と声を荒げるのは簡単だけれど、情けないくらい正直に心が痛んでしまう。ふわふわと、まるで羊水に使っているようにレオリオと居るのは暖かいのだけれど、甘えてばかりも居られない。クラピカは壁の時計を見上げる。
「だめだレオリオ、もう時間だ。行かないと」
「お前一日どれだけ働いてんだよ」
「さあな」
不満げな雰囲気が、受話器を通して伝わってくる。
「拗ねるぞ、俺は」
「分かったよ……」
どうしたらいいのか分からずに苦笑するクラピカに、レオリオの声が被る。
「ムリしろたぁ言わねえけどよ。たまには充電させてくれねえと爆発するからな」
「なんだそれは」
彼を恋人と呼ぶには、時間も距離も少々離れすぎた。共に過ごした時間より、離れて過ごす時間のほうがずっと長い。我侭がすぎる、自分には贅沢な望みだ。クラピカはそう思うのだけれど、口に出したら怒られてしまうので黙っている。
「私は、君の声を聞いただけで十分充電になったよ」
「…………」
「君には、不足なのか?」
「……ったりめえだ、全然足りねえよ」
顔を赤くして怒鳴る姿が目に浮かぶ。次の休みは何か予定が入る前にまず飛行船の予約を入れようと思った。
「……毎朝電話してやる」
それは迷惑だ、と返す口の端が、上がってしまうのは抑え切れなかった。
作品名:おはよう。 作家名:まりみ