触れる場所
からかっているのかとシャムロックは眉間に皺を寄せたのだが、アバランチはまさかと肩を竦める。
「まあこれも、あいつが酔っ払って思わずこぼしちまったってヤツなんだろうが、」
「うん?」
「シャムロックが考えてる事とは多分真逆だと思うぜ?」
「・・・頼むからハッキリ言ってくれないか?」
振られたのかと意気消沈している男に思わせぶりな台詞もどうかと思うぞと続けると、アバランチはどうしたものかと悩んでいる様子だった。
「あいつはな、多分間違いなくお前が好きだな。振られてねえよ安心しろ」
「とてもそうとは思えない振られ方だったぞ」
「言っただろ? あいつはガードが硬いって」
「内気なのは解かったけどね」
「ならもう少し待ってやれよ。俺のお陰でお前はあいつの自宅に入れたんだ。俺だったら門前払いだぜ」
「そうだった。よくも騙したな?」
「感謝しなって」
「・・・感謝する」
これで第一関門突破だ。
アバランチは腹を抱えて笑いながら「頑張れよ!」と休憩室から出て行ってしまった。
一体彼は酔ったタリズマンから何を聞いたというのだろうか?
「・・・・気になる・・・・」
これ程他人が気になるなんてどうかしてる。
シャムロックの溜息は尽きなかった。
「寝ても冷めても彼のことばかり考えているなんて、本当にどうかしてる」
こんなこと亡くなった妻以来だと考えて、そしてまさかと頭を振った。