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【昭鍾】8/21インテ新刊サンプル

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「何、そのため息。何かあったのか?」
「いや、別にー。何でもないけどさあ」
「いやいやいや、そういうもったいぶった言い方すると、何かあったって言ってるようなもんだろ?」
 夏侯覇はほとんどいつも紙パックのコーヒー牛乳を飲んでいる。たまにいちご牛乳も飲んでいるのを見る。牛乳飲んだら背が伸びるとでも思っているんだろうか。しかも中途半端なんだよなぁ、素直に牛乳飲めよ。
 正直手遅れだと思うが、これは黙っておく。
「そうだなー。まあ何かあったって言うか……何もないんだよなあ、これが。何もないのが問題なんだわ」
「なんで?」
「だって、三ヶ月と……何日だったかな、とにかくこれだけ付き合ってて何もないなんて、健全な男子高校生としてどうなんだ? って話だよ。ここ一週間ぐらい避けられてるし」
「なあんだ、そんな話か。聞かなきゃよかったぜ」
「何だそれ、ひでーな」
「しっかし昭ちゃんにしては珍しいよなー、まじで。そんなにガード堅いのか?」
 ガードが堅いか、と言われると鍾会を思い浮かべながら少し悩む。
 意外と好きな人間には甘いので、多分俺が何か仕掛ければ流されて何でもかんでも許してしまうんじゃないかと思う。しかし今現在の状況としては、実際何もしていないわけだ。そもそも鍾会が俺のことを好いてくれてるっていうこと自体がただの思い上がりなんじゃないかと思えてきて、自信も何も徐々に萎んでいった。
 思い返してみれば、「好き」の類の言葉なんて一度も貰っちゃいないことに気づいてしまったのだ。

「堅い……のかねえ? 単に本当は俺のこと好きじゃないのかもなぁ」
「何弱気になってんだよー。昭ちゃんらしくないぜ! 本人にそんなこと言われたか?」
「いいや」
「ならンなバカなこと言ってんなよ。まあ、いいんじゃないのか、自分らのペースで。別に焦るようなもんでもないだろ」
 親友の言葉は深く深く、胸に響いた。いつもバカ話しかしていないが、たまにはいいことを言う奴なのだ。