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サンセッド・fall

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いつのことだかはわからない、私たちは西日の差す土手を歩いている。
右手にはまばゆく光る川、その向うに街。左手に私たちの住む丘。すぐ下の河川敷からも、この道からも、向こう岸からも人の営みの気配がする。
陽は川の先で落ちている。

多分、私たちは十三歳だと思う。
隣を歩く葉のことがよく見えない。だから姿形から年齢の推測が出来ない。けれどこの雰囲気は十三歳の時のものだと思う。
西日がつよすぎる。目を瞑ってもまぶしいし、むせかえりそうなほどの色が一帯を支配している。ここはおかしい。

何もよく見えない。けれど河川敷には犬を散歩させている老人がいる。葉の隣を自転車に乗った中学生達がとおりすぎ、遠くへ行った。街からは喧噪が聞こえる。けれどここはおかしい。だいいち、私たちはどこへ行くのか?

ふと、夏だと気づく。じっとりと汗ばんでいる。葉が持っているHEIYUのビニール袋が、歩くたびカサカサ鳴っていることに気づく。さっきから、初めから葉はこの袋を下げていた。
私たちは帰っているのだ。けれど、HEIYUから炎に行くのに、土手を通る必要があったか?ここは、きたことがない場所だと思う。


「アンナ」


葉に名前を呼ばれて、ひどく驚く。葉が喋るなんて、ありえないことだと思っていた。
きっと一生この土手を、ただ並んで歩いていくのだと確信していた。
葉はいつもそうだ。世界を壊す。葉はいつでも、世界で一番正しい。


「アンナ」


葉は視線を遠くに、なお歩き続ける。惰性で夕陽から目をそらさないまま、私もその横を歩く。
私はまぶしいけれど、葉はまぶしくないらしい。そして、何も許す気はない。


「アンナ」


応えなくては、と自覚している。けれど私は葉と歩き続けている。
正直、葉はよくしゃべれるな、と思う。私は完全に屈している。
葉は私がいつもくじけているのを知っているし、葉はいつでも私を自分の世界に置いておかないと気がすまない。葉は、こんな世界のまやかしにまやかされ続ける私を知っているし、結局私の意志が葉にかなわないのも知っているのだ。
私は、私がこの世界にいることを許す。
けれどそんなこと、葉には関係ないのだ。


「アンナ」


とうとう私は耐えられなくなる。私はそれをわかっていたし、葉はそんな私のことすらわかってる。
私は呼びかけに答えることも出来ず気絶する。
西日は、ここでは永遠に落ちない。
意識が遠のき崩れ落ちながら、初めて葉を見る。葉は立ち止まって、Fall_dawnする私を見ている。


葉。
私の心はいつも葉を呼び続けていて、つまり一回もその名を唱え終ったことがない。
葉は私を細切れに出来る。
たとえこの世界から目覚めても、このまま気絶し続けても、葉、とただ一度その名を呼ぶための時間でしかないことにかわりはないのだ。
長い長い時間が私の上を過ぎていくことだろう。
その時間をきっちり計れるのは葉しかいない。私は葉が切り取った世界を、狂喜しながら与えられるのみだ。
この世界に葉と、街と私の身体が取り残される。
葉だけが全てを持て余さずに、この世界にいれるのだ。
葉の切り取った世界にのみ生きる私が作り出した西日の世界の中で形作られた葉、その世界は私の手を離れ葉の物となった。


葉。
はやく起こして。



全てのものが遠のく中、私は身体にあたる西日の熱波を感じた。

作品名:サンセッド・fall 作家名:ooc