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【中身見本】Sweets Paradis

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【Sweets Paradise】 3章目 途中抜粋

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ベーキングパウダーの微妙な量を測っていると、隣から小麦粉が大量に降ってきた。
ネビルの持った袋が開かなくて、思い切り横に引っ張ったら、包みが破れて、中身を全部、空中に振りまいてしまったらしい。
大量の粉にまみれて、ハリーとネビルは激しく咳き込んだ。
ゴホゴホという声に、みんなの視線が集まり、粉まみれのふたりを見て、笑い声がドッと起きる。

ハリーは恥ずかしさに顔が赤くなった。

粉まみれの視界の先に、パンジーと並んで立っているドラコの姿が、ぼんやりと映った。
真っ白い世界の向こう側から、じっとこちらを見詰めている。

──しかし、それは、ただ見ているだけだった。

相手からの反応は、何もない。

低学年の頃のような、ドラコの挑戦的な行動や、負けず嫌いの言動は、すっかりナリを潜めていた。
まるで監視でもしているのかと思うくらいに、五月蠅いほどまとわりついていたというのに、今ではそれすらもなく、近寄っても来ない。

──きっと、相手は自分の子供じみた行為に気付いて、追いかけることをやめただけだ。
十四歳にもなって、そんな行為は恥ずかしいと、ドラコは思っただけなのかもしれない。

……しかし、なんとなく、ハリーはぼんやりと思った。

ドラコの鼻持ちならない、貴族ぶった高慢な口調で、自分に嫌味を言う姿を見られないのは、なんだか──、日常に緊張感がなくなって、ひどく単調になってしまったような、残念な気がした。
一切声をかけようとはせず、ハリーを見詰める瞳には、どんな感情も浮かんではいなかった。

……ただ、それだけのことだと、ハリーは思おうとしたけれども、相手が追いかけて来ないということは、なんだか──、今まであったものが無くなったような、変な消失感を感じてしまうのは、どうしてなのだろう?

今のように、ドラコからの無機質な視線を受けていると、ムッと不機嫌になってしまう。
(何も、そんな無表情な顔で、こっちを見なくてもいいだろっ!)と、憤った。

ほかのみんなのように、笑うなり、心配そうな顔をするなり(……まぁ、これはないか)、もっと別の表情を見せてみろと思う。
「ドジな英雄だな」とか言って、せせら嗤うこともしないのかと、ムカムカと心の中で毒づく。
もし、それだったら、自分だってちゃんと相手の目を見て、言い返すことも出来たし、喧嘩のひとつでも出来たのにと、思った。

やがて、白い小麦粉の粉が床に落ちて収まり、みんなの笑い声も消えた頃、ドラコはあっさりと視線を前に戻した。
何事もなかったような表情で、黙々と材料を合わしていく作業に戻る。

(なんだよっ!)
ハリーはまた、相手を責めた。

どう考えても、ドラコに対しての自分の気持ちは、思い違いのチグハグな感情に支配されていることに、ハリーは薄々気付いていた。

ここから見えるドラコの姿は、癖のないプラチナの髪に縁どられて、一筋の乱れもなかったけれども、ほほにほんの少しだけ小麦粉が付いていた。
右側の少し下だった。白い肌に白い粉は、ほとんど目立たないけども、やはり気にかかる。

隣に立つ、パーキンソンという名前の取り巻きは、全くそれに、気付いていないようだった。

(──もし、自分だったら……)と思う。

(指の腹で拭ってやって、それでも落ちなかったら、手の甲で払って、……それでも落ちなかったら、舌で舐めて──、そして、そのままゆっくりと頬に沿っていくと、唇があって、それから……、それから……)

ぼんやりとハリーが突っ立っていると、ふいに隣のネビルが肩を落として謝ってきた。
「そんな顔しないでよ。悪いとは思っているんだ。本当にごめん」

頭を下げている声に現実に引き戻されたハリーは、瞬きをする。
いったい何に謝っているのかが分からず、ハリーは下を向いて、絶句した。

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――続きは同人誌にて。
作品名:【中身見本】Sweets Paradis 作家名:sabure