Distorted Love 9
静雄さんが暴れ出すって………どういうことだ?
そう思いながらスキップしながら去っていくイタい姿を見送っていると盛大な破壊音が響き、自販機が舞った。
こんなことをするのはやっぱりあの人しかいなくて…。
僕は静雄さんが暴れているだろう所に自然と駆けていた。
久しぶりに静雄さんに会うから緊張してる。
最後があんなだったからやっぱり幻滅しているのかもしれない。
……でも伝えなきゃ駄目だ。僕の気持ちをちゃんと胸を張って言うんだ。
結果はどうなろうと僕は変われたんだから。
ようやく静雄さんらしい姿が見えた。遠巻きにいた人達を掻き分けながら辺りの惨状を見た。
周りの建物は半ば崩壊していてその残骸と共にガラス等の破片も地面に散らばっている。
それでも暴れるのを止める気配はない。
静雄さんの周りには誰もいなかった。
誰かが静雄さんの怒りを煽ったということはなさそうだった。
一体何があったのだろう…。
また臨也さんが噛んでるのか?
僕は意を決して静雄さんの方へ歩を進めた。
「静雄さん!」
「帝人……?…何で此処に来た?」
静雄さんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに険しい顔をした。
それは僕には向けたことのないほど鋭い目つきで…。
僕はそれだけで動けなくなってしまった。
静雄さんが怒るのも無理はない。僕が自分勝手だから…………。
静雄さんは避けるように僕に背を向けてその場を後にした。
それは一ヶ月前の臨也さんの背に似ていた。
…追いかけないと、ちゃんと言わないとあの時と一緒になってしまう。
せっかく静雄さんと向き合えるようになったのだから。
動けなくなった体に鞭打ち、静雄さんの背中目掛けて走った。
今度は離さないようにと抱き着いた。
「好きです!!静雄さんが好きです!……っ僕はふがいないから、あなたの気持ちを利用するような真似をしてしまいました。優しいあなたを傷つけると分かっていながらっ!それは謝ってすむことではないけど、僕はもう静雄さんを好きになってしまった!!」
「………でも、お前は臨也を…っ」
「確かに臨也さんのことはずっと引きずっていました。でもそのおかげで自分自身に向き合えたと思うんです。そう思えるようになったのは静雄さん……あなたがいたからなんです。だから僕は今此処にいるんです。僕が好きなのは平和島静雄という人間だけだからっ!!」
「……でも俺にはお前の傍にいる資格はねぇんだ。」
…静雄さんの背中は大きい。
だけどそう呟いた背中はとても小さいように感じられた。
作品名:Distorted Love 9 作家名:ゴルベーザ