APHで海賊パロ2
「あたりまえだぞ!」
グッと胸を張るアル
その様子がとても微笑ましい
しかし子供のアルだけで決めていいわけでもないのだろう
まあ一回、様子を見るだけでも行ってみようか
「なら行ってみましょうか」
「本当か!ならオレについてこい!」
パッと笑顔を浮かべるとアルは走り出した
「子供は元気が一番ですね」
クスリと微笑むと菊もまた歩き出した
「ア、アル君。」
「なんだ?」
「これは家、なのですか・・・?」
「そうだぞ!」
菊の目の前には『家』の範囲に収まりきらない屋敷―が広がっていた
その中に堂々と入っていくアル
まさか皇族や貴族の子弟だったのか、という考えが頭をよぎる
「菊ー!こっちだぞ」
緊張でカチコチの菊とは対象に気楽なアル
どうやら本当に彼の住む家らしい
豪奢なつくりの玄関に入るとアルにそっくりな熊のぬいぐるみを抱えた少年が寄ってきた
「アルーおかえり・・・ってその人、誰?」
「ただいまだぞマシュー!コイツは菊!オレの友達だぞ!」
少年はマシューと言うらしい
はっきりしたアルと違ってフワフワした優しそうな子だ
「はじめましてマシューですよろしくお願いします」
「菊、と申します。こちらこそよろしくお願いいたします」
「・・・なんか二人とも固いんだぞ」
アルが苦笑いする
「アル君とマシュー君は兄弟なのですか?」
それにしても異常なほどにそっくりだ
「違うぞ!オレたちは孤児だったんだ」
「それをアーサーさんが引き取ってくださって」
「それで今この家にいるんだぞ!」
「そうだったんですか・・・これは失礼しました」
「失礼なんかじゃないぞ!」
「今はこうして不自由なく暮らせてますから」
「アーサーさんという方はとてもお優しいのですね」
「優しくないぞ!怒ると怖いし、料理は不味いし、眉毛だし」
・・・最後の一言の意味がよく理解できない
「あれは料理というより別の物体なんじゃ・・・」
マシューの額に冷や汗がつたう
その時
「お前ら、俺の悪口いってるだろ」
広い玄関にリンとした声が響いた
声のした方を向くと
そこに彼が立っていた
「げっ!アーサー」
どうやら彼がアーサーのようだ
濃い金髪に翡翠色の瞳
本来は美しいはずの整った顔立ちを
アルの言葉どおりの眉毛が少し残念なことにしている
「ん?おいアル・・・そいつ誰だ?」
「菊だぞ!オレの友達だ!」
「初めまして菊と申します」
「俺はアーサー・カークランドだよろしく」
「菊は行く場所がなくて困ってるんだって!アーサーなんとかしろ!」
「はぁ?」
アーサーが顔をしかめる
「なんとかしろ・・・って俺にできることなんて部屋の提供ぐらいしか・・・」
「菊!それでいいのか?」
部屋を提供してもらえるのはありがたいがしかし
「いいんですか?私みたいな初対面の者に・・・」
「アルの友達なら歓迎してやるぞ」
友達といってもほんの数刻前に出会ったばかりなのだが
これが西の国の標準なのだろうか?
「お前、菊・・・だったか?その恰好は東の国の者だろ、なんでこの国に来たんだ?」
「あ、ええと、私は故郷の国では医師をやっておりまして、西の国の医術を学ぼうと思い来たのです
東の国の医術では限界がありますので」
「菊は医者なのか!?」
「すごいです」
アルとマシューが素直に驚く
「ふーん、医者か・・・よし!ならこの家の担当医になれ」
「え?」
サラリと言われた言葉に目が丸くなる
「い、医者と言いましても手術みたいな大きなことはできませんよ!?」
「ちょうど家に医学の心得がある奴がいればいいと考えてたところなんだ、どうだ、やってみねぇか?」
「オレも菊のカッコいい所見たいんだぞ!」
「白衣って憧れますよね」
「う・・・」
こう二人の子供に言われては後戻りができない
「―分かりましたやらせていただきます」
「よし!これで菊もこの家の一員だぞ!」
アルが飛び跳ねて喜ぶ
「じゃあ荷物抱えて俺についてこい!」
アーサーが手招きする
「は、はい!」
荷物をたぐりよせ彼の背中を追った