明日もきっと、そろって
今日は熱いだ寒いだおかげで肌の髪の調子が悪いから始まって(作られたばかりのこの世界で四季などはないも同然なのに)、並べられた食卓にも文句を言う。そもそも食べたくないのに、わざわざ呼ばれているのだから口に合うものでなければ一口も食べたくないという言い分だ。
「いい加減にしろ。食べるな」
我侭ばかりのクジャにとうとうそれを言ったのは、作った料理を貶されてばかりのゴルベーザでも礼儀に煩いアルティミシアでも、仕切りたがりの皇帝でもガーランドでもなかった。
「食卓を共にしよう」との年長組の提案にクジャと一緒に食事を拒否していたはずの、セフィロスだ。不意を突かれて、クジャがまん丸の目のまま固まる。不意にその顔が真っ赤になったかと思うと、彫り物がされた重い木の椅子を蹴倒して、広間を出て行った。
足音が廊下に高く響いていく。
「セフィロス……」
ゴルベーザの困惑した声で呼ばれ、腕を組んだまま形の良い顔を明後日へ背けた。
セフィロスの皿も空になっている。先ほどまで飾り切りされたフルーツが盛られていた。
最近まで、デザートはもちろん主食すら食事を摂る習慣も必要もないと、残してばかりだったのはセフィロスだった。
「……やつは、口が過ぎる」
苦々しい声がして思わずアルティミシアが苦笑した。ナイフを握ってグレープフルーツの皮と格闘していた暗闇の雲が、そんなミシアに不思議そうな顔をする。
「セフィロスの言うとおりだな。確かに、勝手もいい加減にせねばならぬ」
同意の声はガーランドだ。皇帝もうなずいた。
セフィロスの表情は変わらないが、その向かいに座るケフカが面白いものを見た顔で笑った。
「あーっ、今安心した! セフィロスってば安心した! ご飯のときに喧嘩するから、叱られるって思ったんだ!」
「ケフカ。煩いのは貴方ですよ。あんまり騒ぐと、明日の食事は油ものかもしれませんよ」
ケフカは油っぽいものが嫌いだ。隣のミシアに卑怯だ、ずるい、などと言いながらおとなしく座る。
ゴルベーザが立ち上がろうとした。皇帝がさっと手をかざしてその動きを制し、ゴルベーザが戸惑った間にエクスデスがふっと消えた。大樹である彼はもちろん人の食事を必要としないが、食卓にその姿が欠いたことはない。
「任せておけ」
と、皇帝が言った。ゴルベーザが腰を戻す。
今日の片付け当番は皇帝だ。ゴルベーザに手伝ってもらえないのが嫌なだけではなかろうな、とセフィロスは邪推した。
作品名:明日もきっと、そろって 作家名:しろ