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【T&B】ブラックアウト

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ふわふわとして気持ちいい。ゆりかごのようなこの心地よさに、全て預けてしまいたい。
なんて幸せ夢うつつは、案外あっさりと終わりを告げた。ぼすん、と急に落とされた衝撃で虎徹は目を覚ます。しかし落とされたにしては背中に感じた痛みは弱い物で、うっすらと目を開けると最近見慣れてきた相棒の顔が間近にあった。
「いって…って、バニー?」
「バーナビーです」
「…っ!?」
 寝ぼけながらもやたら距離が近いなと思っていたら、何の予告もなく唇が塞がれた。抵抗する間も無く、当然のようにバーナビーの舌がぬるりと侵入してくる。熱い息と遠慮なく絡めてくる舌の熱さに、酔ってるな、と頭の冷静などこかで虎徹は確信した。なら仕方がない、わけがない。未だキスに夢中なバーナビーの肩を掴むと、力任せに引きはがす。
「おいっ! バニーちゃん待てって! まて! おすわり! ハウス!」
 虎徹の必死な訴えが届いたのか、ゆっくりとバーナビーは身を起こした。不満げな舌打ちは聞こえないことにしておく。
「……兎の次は犬ですか」
 起き上がると胡乱な視線を向けられた。広いベッド上でさりげなく距離を取りながら、虎徹はなんとか宥めよう作戦に出る。
「とにかく落ち着け! 俺は男で、お前も男だ」
「知ってます」
 出来るだけ落ち着いた声音を心がけたら、バーナビーの声の方がよほど落ち着いていて拍子抜けしてしまった。だよな、と相槌を打ちながら虎徹は次の言葉を探す。キスで意識は覚醒したものの、自分も酔っていたせいか正常な思考回路までは回復しなかったようだ。
「あー…だから、お前が声かければ相手してくれる女の子なんて、沢山いるんじゃねーの?」
 ハンサム、ともう一つの彼のあだ名をつけ足してやると、何故か無言で凄まれてしまった。
「んじゃあ、バニーもファイヤーエンブレムと同じ趣味だったってか?」
「僕が抱きたいのはオジサンだけですよ」
「……なんで?」
 思い出したようにやってきた頭痛のせいで、虎徹はバーナビーの言葉の意味をよく理解出来なかった。悪酔いしたかと虎徹は顔をしかめる。ズキズキと痛む頭に手をやると、その手首が不意に掴まれた。
「知りませんよ、そんなの」
 思いのほか近くでバーナビーの声がして、置いたはずの距離はいつの間にか詰められていたらしい。情けなくも軽く肩を押されただけで身体は倒れて、虎徹は再び柔らかな感触に身を沈めることになってしまった。捕らえられた手はバーナビーの頬に触れると、何度か擦り寄られる。手のひらを唇に一瞬だけ吸われてようやく離されたかと思えば、握りしめられた手はベッドに押し付けられていた。
(頭、痛い)
 されるがままぼんやりと人の手と勝手に触れ合うバーナビーを見上げていた虎徹は、知らないと言うバーナビーの硬い声が耳に残って、落ちてくる二度目のキスは拒めなかった。