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kiss me,love me

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「気持ちいいか?」

 灰色と金色の瞳が大きく開いて、またたいた。それが細まって、眉間にかすかな皺が寄る。困った表情のアレルヤがこちらを上目に見て、消え入りそうに呟いた。
「……そういうの、似合わないよ。刹那」
 言葉が拒絶ではなかったことにほっとして、彼の頭を胸に抱え込んだ。
 似合うとか、似合わないとかはどうでもいいのだ。らしくないと彼は言ったけれど、そんなことより重要なことがある。少なくとも俺には。
「もう……」
 呆れたようなため息が胸の中から聞こえた。
 展望室でぼんやりしているところをつかまえて、キスをした。アレルヤがベンチに座っているせいで、身長差がいつもと逆転している。頭を抱き込んだのは、アレルヤに立たれてせっかくできた差を覆されたくなかったから。── ふれたいのも、もちろんあったけれど。
(こんな些細な、ほんの一時的な優位にすがりつこうとしている自分は、確かに滑稽だとわかっている)
 胸の中の、癖の少ない黒髪を撫でた。引っ張ると、するすると指の間をすべる感触が心地良い。ここちいい、アレルヤも同じように思っていてくれたらいいのに。
 腰をかがめて、腕の中で所在なさげにからだを縮めているアレルヤを覗き込んだ。かち合った視線がそらされる前に、キスをする。
 もう一度。……もう一度。
 キスが次第に深くなる。唇を開かせれば、応じた。舌先でねだれば、同じようにふれてくれた。長いことそうして、酸欠になるまで遊んで、離れたときにはちゅ、とちいさく音がした。
「気持ちいいか?」
「……ん……」
「もっと、したいか」
「そんな、こと……」
 視線は戸惑って逃げていく。でも、ふれる唇は、とまる呼吸は、重ねる回数は、これをいやだと言っていないから。
 赤くなった顔をだまってじっと見つめ続けていると、色違いの目がもう一度ちらりと俺を見て、それからやっと、観念したように微笑んだ。

「……でも、刹那のキスは、好きだよ」
作品名:kiss me,love me 作家名:にこ