ちっちゃいレッドさん+グリーン+α
グリーンが腕に抱えた、まだ幼い子を指差してヤスタカは言葉を発する。
「もしかして、リーダーの子ど…」
「アホ」
「あいてっ」
頭に拳骨が落ちた。じゃあ何なんですか、と問うと返ってきたのは従兄弟だ、というごく普通の答え。
「はー、似てないですね」
「性格はよく似てるって言われるけどな」
「へえ、どんなとこですか?」
「……頑固なとことか、」
「あははっ!」
堪えきれずに笑うと拳を掲げられたので、ヤスタカは急いで頭を両手で覆った。
「…とにかく、こいつ今日一日ここで面倒見るから」
「了解です」
じゃあちょっと頼むわ、と抱えていたレッドを降ろす。不安そうな目をして見上げてくるその子に大丈夫だという意味を込めてぽんぽんと頭を叩いて、部屋へと向かった。
だが頼んだのはいいものの、ジムトレーナー達は皆面倒見がいいので任せても大丈夫だとは思うが如何せんレッドは人見知りだ。その上無口でもある。
歩きながらも色々考えていれば段々心配になってきて、いてもたってもいられなくなりグリーンは再び彼らのいる部屋へと踵を返す。
案の定そこにはジムリーダー達に囲まれて困惑した様子の従兄弟がいた。少し眉間に皺を寄せて俯いている。泣きそうな時の表情だ。
「レッド」
仕方ない、と一つ溜め息を吐いてグリーンはその名前を呼んだ。レッドはびくりと肩を揺らしたあとゆっくりとグリーンへ視線を向ける。
「…おいで」
手招きすると無表情ながらもどこかほっとしたような雰囲気で足早に近付いてきた。
「悪い、やっぱこいつ連れてくわ」
一言断りを入れて部屋を出る。ほら、とグリーンが手を差し伸べるとレッドは何も言わずにぎゅっと自分よりも大きな手を握り締めた。
「グリーンさーん」
部屋の扉を開けて主の名前を呼べども何の反応もない。いつもはすぐに返事が来るのに、と不思議に思っているコトネに声を掛けたのは振り返った先にいたヤスタカだった。
「あ、コトネさん。リーダーなら従兄弟の子とソファで寝てますよ」
言われた方向に視線を向けると、いつも見る彼と小さな子供が毛布にくるまって一緒に眠っていた。
「ホントだ…ふふ、可愛い」
「ですよね。あんな無防備なリーダー、なかなか見れませんから」
二人でくすくすと笑っているとそう言えば、とヤスタカが声を掛けた。
「今から皆でお茶するんですけど如何ですか?」
「わ、ぜひ行かせて下さい」
じゃあ行きましょうか、と言ってヤスタカは歩みを進める。その前に、とコトネはもう一度部屋の中でぐっすりと眠る二人を見つめた。
「…おやすみなさい」
部屋を離れる前に誰にも聞こえないくらいの声で呟き、そっと扉を閉じて前を歩く彼の背中を追った。
作品名:ちっちゃいレッドさん+グリーン+α 作家名:あおい