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黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~

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 小さく笑うと、京也に作業の先を促す。肩をすくめると、京也は残りのものを用意し、確かめ、頷いた。
「完了っす。お待たせしました」
 ベストとゴーグルを身につけ、声をかける。
 黒のハーフコート姿の如月に比べると、ずいぶんとらしい格好だった。
 如月は頷いた。そして、つまんだままだった紙を京也に差し出すと、壁に預けていた背を引き剥がす。
 少し考えて、京也は紙片を携帯端末(H・A・N・T)の内側に挟み込んだ。
 京也、如月の順に部屋を出た。そして、京也が扉を閉めるすきまから、如月はもう一度部屋の中を覗き込んだ。
「京也」
 部屋の鍵をかけたあと、ノブを回してひっぱる。手ごたえを確かめ、歩きだそうとした京也に如月が声をかけた。
「なんすか?」
「うちの部屋の様相をこうしたら、叩きだすぞ」
 京也が高校時代に住んでいた部屋を知っている人間ならば、むべなるかなと大きく頷くところだろう。
 彼が天香学園に来て、ほぼ三ヶ月弱。
 外に出ることまかりならず。トイレ風呂キッチン、総て共同。
 にもかかわらず。
 正体不明の物体はそこかしこに転がり、足の踏み場は限りなく少なかったのだ。
「……あい」
 静かに告げられる家主の言葉に、大人しく京也は頷いた。


「検問の一箇所をあけた。そろそろ逃げろ」
 受話器の向こうから返ってくる応えに、村雨は頷いた。
「よくやってくれた。そろそろ仕上げだ。気を抜くな」
 電話を切ると、机の上の紙――呪符を手に取り、放った。
 見る見るうちに、鳥に姿を変えるそれに話かける。
「《秘宝の夜明け》(レリックドーン)だが、話がついた。東洋人の若い方は逃がしてやれ。それが条件だ」
 村雨の言葉を聞くと、鳥は室内を数度回った。
「行け」
 次の瞬間、鳥は速度と高度を上げる。だが、天井にぶつかっておちてくるという、ごくあたりまえの光景はない。かわりに、室内の明かりが揺らぐ。
 羽音だけを残し、鳥は室内から姿を消した。